Linux Mintでプライバシーを強化する方法|ファイアウォール・DNS設定・Flatpakの権限管理まで徹底解説

備忘録

はじめに

Linux Mintは「静かなOS」として人気がある。
余計な広告やテレメトリも少なく、プライバシーを尊重する設計思想が光る。

しかし、その“静けさ”に甘えて放置すると、思わぬ通信や情報漏洩にさらされる危険性が潜む。

本記事では、Linux Mintをプライバシー保護の観点から再構築する手法を紹介する。
目指すのは、“しゃべらないLinux”。
通知の遮断、DNSの再設定、Flatpakの権限管理、APTの調整、UFWによる通信制御…

これらを通じて、より純粋な“匿名性”に近づける。


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ステップ1:通知と自動通信を止める

Linux Mintは、便利さと引き換えに“おせっかいな通信”を抱えている。まずはそこから見直す。

  • アップデートマネージャーの自動チェックを無効化
    GUIから設定するか、次のコマンドで確認するとよい。
    gsettings set com.linuxmint.updates auto-refresh false
    
  • Warpinatorやmintreportの自動起動を停止
    sudo apt purge warpinator mintreport
    

    自動起動アプリ一覧から無効にするだけでも効果はある。

  • Gufwの通知を抑える
    GUI通知はログイン直後に発生することが多く、視覚的ノイズになりやすい。CLI操作へ移行し、通知を発生させない構成に切り替える。


ステップ2:DNSリクエストの追跡を断つ

ISPのDNSをそのまま使用すると、アクセス記録が逐一送信されてしまう。これはプライバシー上の大きな盲点となる。

  • Unboundを導入し、ローカルDNSを構築
    sudo apt install unbound
    sudo systemctl enable unbound
    sudo systemctl start unbound
    
  • NetworkManagerでDNSの設定を127.0.0.1に固定
    nm-connection-editor
    

    すべての接続プロファイルに対してIPv4/IPv6のDNS欄をローカルに設定。これにより、外部DNSとの通信はUnbound経由のみに制限される。


ステップ3:Flatpakアプリの権限を見直す

Flatpakはセキュアとされるが、デフォルト状態では多くの権限がアプリに委ねられている。

  • Flatsealの導入
    flatpak install flathub com.github.tchx84.Flatseal
    

    GUIでアプリごとのマイク・カメラ・ファイルアクセスを個別に制御できる。明確な用途がない権限はすべて無効にするのが理想。

  • 未使用Flatpakアプリの整理

    flatpak uninstall --unused
    

    サンドボックスであっても、インストールされている限り潜在的なリスクを持つ。


ステップ4:APTの情報発信を制限する

APTはリポジトリに対してシステムの構成情報を送信する仕様となっており、知らぬ間に“しゃべって”いるケースもある。

  • User-Agentの書き換え
    /etc/apt/apt.conf.d/99useragent を作成し、以下を記述。
    Acquire::http::User-Agent "Anon";
    
  • HTTPS経由の通信を徹底
    sudo apt install apt-transport-https ca-certificates
    

    通信の暗号化により、盗聴や改ざんのリスクを低減。

  • 不要なPPAを削除
    正体不明なPPAは危険をはらむ。/etc/apt/sources.list.d/ を確認し、信頼できないものは削除。


ステップ5:UFWの設定を研ぎ澄ます

UFWは初心者向けに設計されたファイアウォールだが、その柔軟性を使いこなせば十分に高度な保護が可能。

  • 基本ポリシーの設定
    sudo ufw default deny incoming
    sudo ufw default allow outgoing
    
  • ローカルサービスのブロック
    sudo ufw deny 5353/udp
    

    AvahiなどのmDNSプロトコルは、意図せず情報を発信することがある。

  • ログ記録の無効化

    sudo ufw logging off
    

    ログに不要な痕跡を残さないことも、プライバシー保護の一部といえる。


自動化シェルの紹介

最後に、記事で紹介した各ステップをできる限り自動化する Linux Mint向けプライバシー強化シェルスクリプト を紹介する。
一部GUI操作が必要な設定(FlatsealやNetworkManager編集など)は除外または補足コメントを入れている。


🛡 シェルスクリプト全文(mint_privacy_hardening.sh)

#!/bin/bash

echo "=== Linux Mint プライバシー強化スクリプトを開始 ==="

# スーパーユーザーでの実行チェック
if [ "$EUID" -ne 0 ]; then
  echo "このスクリプトは root で実行してください。"
  exit 1
fi

# ステップ1: 通知と自動通信の停止
echo "[1/5] 通知と自動起動アプリの無効化"

gsettings set com.linuxmint.updates auto-refresh false

apt purge -y warpinator mintreport

echo "[1/5] 完了"

# ステップ2: Unboundの導入(DNS再構築)
echo "[2/5] Unbound によるローカルDNS構築"

apt install -y unbound

systemctl enable unbound
systemctl start unbound

echo "※ NetworkManager で各接続のDNSを 127.0.0.1 に変更してください。"
echo "[2/5] 完了"

# ステップ3: Flatpakの整理とFlatsealの導入
echo "[3/5] Flatpakの不要アプリ整理とFlatseal導入"

flatpak uninstall -y --unused

flatpak install -y flathub com.github.tchx84.Flatseal

echo "※ Flatseal を起動してアプリごとの権限を手動で確認・制御してください。"
echo "[3/5] 完了"

# ステップ4: APTの通信最小化と暗号化
echo "[4/5] APT設定の強化"

cat <<EOF > /etc/apt/apt.conf.d/99useragent
Acquire::http::User-Agent "Anon";
EOF

apt install -y apt-transport-https ca-certificates

echo "※ /etc/apt/sources.list.d/ を手動で確認し、不要なPPAを削除してください。"
echo "[4/5] 完了"

# ステップ5: UFWの構成
echo "[5/5] UFWファイアウォールの調整"

ufw default deny incoming
ufw default allow outgoing
ufw deny 5353/udp
ufw logging off
ufw enable

echo "[5/5] 完了"

echo "=== すべてのステップが完了しました ==="

🔧 使用方法

  1. ファイル名 mint_privacy_hardening.sh で保存。
  2. 実行権限を付与:
    chmod +x mint_privacy_hardening.sh
    
  3. 管理者権限で実行:
    sudo ./mint_privacy_hardening.sh
    

⚠ 注意事項

  • DNS設定(127.0.0.1指定)Flatsealでの権限調整は手動操作が必要。
  • APTのPPAチェックは自動化せず、/etc/apt/sources.list.d/ の中身を確認・編集することを推奨。
  • 初心者向けとは限らないため、設定変更の前にバックアップを推奨。

まとめ

ここまでの設定を施すことで、Linux Mintは“黙るOS”へと変貌する。

  • 自動通信の遮断により、裏側で動くプロセスが沈黙する。
  • DNSやAPTのチューニングで、接続先との関係性を匿名化できる。
  • FlatpakやUFWの細分化設定により、意図しない情報発信を根絶できる。

プライバシーとは、「何を見せないか」を選ぶ技術だ。
静かに、しかし確実にLinux Mintをネットワークから切り離す。

その第一歩として、この記事の手順が役立つはずだ。

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