VSCode×Cline×GeminiでAI開発支援環境を構築する方法|無料で使えるCursor代替環境

プログラミング

はじめに

AI開発支援ツールが急速に普及する中、有料のCursorを使いたいが月額費用が気になる、そんな開発者も少なくないはずだ。

本記事では、無料ながらCursorに匹敵する開発体験を得られる環境構築手順を紹介する。
使用するのは、VSCode拡張機能「Cline」とGoogleの「Gemini API」。実質無料で本格的なAIアシスタントを実装可能な構成となっている。

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なぜClineとGeminiを選んだのか

Clineを採用した理由

Clineは、VSCodeで利用可能なAIアシスタント拡張機能の中でも、特に「シンプルさ」と「安定性」に優れている。
数ある選択肢の中でClineを選んだ理由は、以下の4点に集約される。

1. Cursorライクな操作感

Clineは、UI・UXの設計がCursorに非常によく似ており、以下のような共通点がある。

  • コマンドパレットや専用チャット画面からAIと自然にやり取りできる
  • Plan(計画)とAct(実行)という明確なモード分離があり、意図を持ったプロンプト管理がしやすい
  • ファイル生成・編集・説明などが自然なフローで行える

これにより、Cursorからの移行ユーザーもほとんどストレスなく使い始められる。

2. インストールから運用までが簡単

VSCodeユーザーであれば、拡張機能を検索してワンクリックで導入可能。
設定項目も最小限で、初心者でも戸惑いにくい。特に、以下のようなユーザーに向いている。

  • AIツールを初めて使う開発者
  • CopilotやChatGPTに不満があり、より開発支援寄りのツールを求めている人
  • 学習コストを最小限に抑えつつ効率化したい人

3. 安定性の高さ

Clineはフォーク先のRoo CodeやContinue.devと比較して、機能を絞り込んでいる分、動作が非常に安定している。
特に以下の点で信頼性が高い。

  • API呼び出し時のエラーが少ない
  • 拡張機能自体のクラッシュや不具合報告が少ない
  • 意図しないファイル破損や暴走が起きにくい設計

本格開発において「壊れない」「挙動が予測できる」ことは非常に重要だ。

4. 開発チームによる丁寧な設計とドキュメントの充実

GitHub上でのissue対応も比較的早く、ユーザーのフィードバックに基づいた改善も定期的に行われている。
また、英語ではあるが、ドキュメントが整っており、トラブル時の対応策も分かりやすい。


Gemini APIを採用した理由

Google Gemini APIは、無料で高品質なAIアシストが可能な稀有な選択肢であり、以下の理由で最有力となる。

1. 完全無料のトークン枠が圧倒的に多い

他の大手API(OpenAI、Anthropicなど)と比較しても、以下の点が際立つ。

プロバイダ 無料枠の内容 料金(100万トークンあたり) 品質
Gemini 2.0 Flash 月100万トークンまで無料 \$0 高い
Claude 3 Sonnet 無料枠なし、最低\$5課金必要 約\$3 高い
GPT-4o mini 無料枠なし 約\$0.15 中〜高
GPT-4o 無料枠なし 約\$5 高い

→ Geminiは無料でありながら、トークン数・品質・速度のすべてにおいて高水準を維持している。

2. コード生成に強く、ChatGPTに近い体験が可能

Geminiは自然言語の応答だけでなく、プログラミング関連の指示に対しても非常に精度の高い出力を行う。
特に以下の点で強みがある。

  • HTML/CSS/JavaScriptなどのWeb系言語への対応力
  • PythonやTypeScriptでのユースケース提案やバグ修正
  • ファイル構成提案やディレクトリ構造の設計支援

Clineと組み合わせることで、開発全体をナビゲートしてくれる存在となる。

3. レスポンスが速く、開発テンポを損なわない

Gemini 2.0 Flashは、OpenAIのGPT-4よりもレスポンスが明らかに速い
数秒以内に応答が返ってくるため、実際の開発中でもテンポを乱されにくい。

→ コーディング・デバッグ・設計レビューなどを連続して行いたいときに大きなメリット。

4. 導入が簡単で、クレジットカード不要

他の有料APIと異なり、Googleアカウントさえあれば即座にAPIキーを取得できる。面倒な登録手続きや請求設定が不要で、すぐに使い始められるのは大きな魅力。

5. 信頼性・将来性が高い

Googleが提供しているAIサービスであり、今後の進化・統合の期待も大きい。特にGCPやAndroid Studioなど、Google系開発環境との親和性が高いため、将来的な拡張にも有利だ。


インストール手順

通常インストール

  1. VSCodeを開く
  2. 拡張機能タブを開く(Cmd+Shift+X / Ctrl+Shift+X)
  3. Cline」と検索し、インストールボタンをクリック

ネットワークエラー発生時

net::ERR_TIMED_OUTなどのエラーが発生した場合は、手動インストールに切り替える。

手動インストール手順

VSIXファイルの取得方法

もしくは、ターミナルで以下を実行:

cd ~/Downloads
curl -L -O https://github.com/cline/cline/releases/latest/download/cline.vsix

VSCodeへの導入

  1. コマンドパレットを開く(Cmd+Shift+P / Ctrl+Shift+P)
  2. Extensions: Install from VSIX…」と入力
  3. ダウンロード済みのVSIXファイルを選択し、インストール

インストール確認

  • サイドバーにClineのアイコンが表示されている
  • 拡張機能タブで有効化されていることを確認
  • コマンドパレットで「Cline」と入力し、各種コマンドが表示されれば完了

Gemini APIの設定方法

APIキーの取得手順

以下の記事に、GeminiのAPIキーの取得手順について、詳しく解説している。
もしまだAPIキーを作成していない場合は、記事を参照して、APIキーを作成する。

Google AI Studio で Gemini API キーを取得する方法
生成AIのGoogleの「Gemini」が開発者の間で注目を集めている。特にGemini APIには無料枠が存在する点が大きな魅力だ。無料で試せる環境があることで、AIを組み込んだアプリ開発のハードルが大幅に下がる。本記事では、Google AI Studioを活用してGemini APIキーを取得する方法を解説する。

Cline側の設定

以下の記事に、取得したAPIキーを用いてClineの設定をどのようにセットアップするか詳しく解説しているので、記事を参照して、Clineの設定をセットアップする。

ClineにGemini APIを設定する方法|無料で始めるVSCode×AI活用術
VSCodeの拡張機能「Cline」とGoogleのAIモデル「Gemini」を連携させることで、コード生成やデバッグが効率化される。この記事では、APIキーの取得から具体的な設定方法までを初心者にもわかりやすく解説している。

推奨設定例

VSCodeのsettings.jsonに直接記述したい、またはバックアップ・共有目的の場合、以下の形式で記載できる。

{
  "cline.provider": "Google Gemini",
  "cline.model": "gemini-2.0-flash-exp",
  "cline.apiKey": "ここに取得したAPIキーを貼り付ける",
  "cline.maxTokens": 8000,
  "cline.temperature": 0.7
}

補足解説:

  • maxTokens:1回の応答で最大何トークンまで返すか。8000程度で十分だが、短文中心なら4000でも可。
  • temperature:生成内容のランダム性(0.0〜1.0)。0.7が自然な文章生成に適しており、迷ったらこれでOK。

自動承認を有効にする手順:

Clineでは、ファイル読み取りや変更に対してユーザーの承認が必要な場合がある。頻繁に操作を行うと、毎回確認ダイアログが出て煩わしく感じることもある。

  1. Clineの「Settings」画面を開く
  2. 以下の項目をオン(チェック)にする
項目 説明
Auto-approve 実行コマンドの自動承認を有効化
Read ファイルの読み取り操作を許可
Edit ファイルの変更(上書き・作成)を許可
Safe Commands 推奨される安全な操作(フォーマット、整形など)を許可

✅ 推奨:Auto-approveはデフォルトで有効にしておくと効率が格段に上がる。
特に複数ファイルにまたがる作業では必須レベル。

動作確認と活用例

テスト例

HTMLとCSSでシンプルなハローワールドページを作って

想定される挙動

  • index.htmlが生成される
  • 必要に応じてstyle.cssも作成
  • 結果がチャットで表示される

使用量の目安

100万トークンで可能な範囲

プロジェクト規模 内容 トークン数目安
小規模 ランディングページ等 15,000〜50,000
中規模 ECサイト、ブログ等 80,000〜200,000
アクティブ開発者 平日+週末の使用 300,000〜600,000

得られるメリット

今回紹介した「Cline + Gemini API」の構成を活用することで、以下のような成果が得られる。

  • 費用ゼロで高機能なAI開発支援
    Gemini 2.0 Flashの無料枠(月100万トークン)を活用することで、月額コストなしでCursorと似た開発体験が可能になる。
  • 環境構築が簡単
    VSCode拡張機能の導入とAPIキーの設定だけで利用できるため、インフラ構築の手間がない。特別なバックエンド開発やサーバー管理も不要。

  • 初心者にも扱いやすいUIと操作性
    Clineのインターフェースはシンプルで直感的。PlanとActという2つのモードにより、使い分けも明快だ。

  • 学習コストが低く即戦力
    セットアップ後すぐに使い始められる。学習目的やPoC開発にも最適なツールと言える。

  • VSCodeとの高い親和性
    既存のエディタ環境を変えずに導入できるため、普段の開発フローに無理なく統合可能。

想定される活用シーン

活用シーン 内容の一例
個人開発 ウェブアプリ、CLIツール、Bot開発など
プロトタイピング MVP(最小限製品)の実装や機能検証など
学習・リサーチ用途 プログラミング学習、AIツールの習熟など
小規模な商用プロジェクト クライアント向けデモ、技術検証など

注意すべき制限事項

  • リアルタイム補完は非対応
    CursorやCopilotのようなインライン補完は現時点で提供されていない。今後、別の拡張機能と組み合わせて補完できる可能性はあるが、本構成単体では未対応。

  • Gemini APIの使用制限
    月間100万トークンという上限、1分あたり15リクエストというレート制限がある。アクティブな商用開発や大規模プロジェクトには制限が出る可能性がある。

  • セキュリティ・プライバシー面の考慮
    APIに送信するコードやファイル内容は外部に送られるため、機密性の高い情報は避けるか、別の方法で保護することが望ましい。


まとめ

この構成は、有料AI支援ツールを検討しているすべての開発者にとって、有益な第一歩となる。
まずは無料のCline × Gemini環境で、その可能性を体感してみてほしい。

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