【ビジネス実務法務検定試験3級】第48回試験 第1問の解説

ビジ法対策

はじめに

ビジネス実務法務検定3級の過去問をもとに、各選択肢について詳しく解説する。単なる正誤判定ではなく、実務的な視点を交えて理解を深めていこう。


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問題 第1問

次の事項のうち,その内容が正しいものには①を、誤っているものには②を、解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。


ア.クーリング・オフの行使方法について

消費者Xは、Y社との間で商品の売買契約を締結したが、特定商取引法に基づき、クーリング・オフを行使しようとしている。この場合、XはY社の営業所に赴いて、口頭でクーリング・オフを行使する旨を伝えなければならない。

【解説】
これは 誤り(②) だ。
クーリング・オフは、書面または電磁的方法(電子メールなど)で通知すればよく、直接営業所に行って口頭で伝える必要はない。口頭のみでの申し出では証拠が残らず、後で「言った・言わない」の争いになる可能性がある。そのため、書面での通知が望ましい。


イ.債権の強制執行について

X社は、Y社に対し貸金債権を有しているが、弁済期日を過ぎても返済されていない。債権者が自力で回収することは禁止されているため、法律で定められた強制執行手続によって回収するのが原則である。

【解説】
これは 正しい(①)。
自力救済禁止の原則」により、債権者が勝手に相手の財産を差し押さえることはできない。例えば、X社がY社の倉庫から勝手に商品を持ち出して貸金の弁済に充てるのは違法行為となる。強制執行は裁判所の手続きを経て行うのが原則である。


ウ.著作者人格権について

著作権法上、著作者の有する著作者人格権には、公表権、氏名表示権、および同一性保持権の3つがある。

【解説】
これは 正しい(①)。
著作権法上の著作者人格権には次の3つがある。

  • 公表権(作品を公にするかどうかを決める権利)
  • 氏名表示権(作品の著作者名を表示するかどうかを決める権利)
  • 同一性保持権(無断で作品を改変されない権利)

著作者人格権は、著作権と異なり譲渡できず、著作者が生存している間のみ有効である。


エ.不法行為の損害について

民法上の不法行為が成立するためには損害が発生していなければならず、この損害には逸失利益(収入として見込まれたものが得られなかった利益)は含まれない。

【解説】
これは 誤り(②)。
逸失利益(休業損害なども含む)は、民法上の損害賠償の対象となる。不法行為によって得られるはずだった利益を失った場合も、賠償請求できる。例えば、交通事故でケガをして仕事を休むことになった場合、その間の収入減少分(休業損害)も請求可能だ。


オ.株主平等の原則について

株主が、その所有する株式の内容および数に応じて、会社から他の株主と平等に扱われることを株主平等の原則という。

【解説】
これは 正しい(①)。
会社法上、「株主平等の原則」により、同じ種類・同じ数の株式を持つ株主は同等に扱われるべきとされている。ただし、株式の種類に応じて優先株・劣後株のように権利が異なるケースもある。


カ.質権設定された債権の取り立て

A社は、B社がC社に対して有する債権に質権を設定したが、A社はC社に対する債権を直接取り立てることはできない。

【解説】
これは 誤り(②)。
質権設定が行われた場合、質権者(A社)は、債務者(C社)に対して直接取り立てを行うことができる。つまり、B社がC社から債権を回収しなくても、A社が回収可能である。


キ.セクハラ対策について

事業主は、職場においてセクシュアル・ハラスメントが生じることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

【解説】
これは 正しい(①)。
男女雇用機会均等法により、事業主にはセクハラ防止の義務がある。適切な研修や相談窓口の設置などが求められる。


ク.相続の法定相続分について

相続人が配偶者および直系尊属である場合、直系尊属の法定相続分は3分の2である。

【解説】
これは 誤り(②)。
民法上、配偶者と直系尊属が相続人となる場合の法定相続分は 配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1 である。したがって、問題文の記述は逆になっている。


ケ.会社の秘密文書の持ち出しと窃盗罪

会社の秘密文書の管理権限を有しない従業員が、無断で社外に持ち出した場合、窃盗罪が成立し得る。

【解説】
これは 正しい(①)。
他人の財物を無断で持ち出す行為は窃盗罪に該当する可能性がある。ただし、業務上横領罪(刑法第253条)に問われることもある。


コ.売買契約における引渡場所

X社とY社は売買契約を締結したが、引渡場所が決められていなかった。この場合、Y社はX社が指定する場所で引渡しをしなければならない。

【解説】
これは 誤り(②)。
民法では、特に指定がなければ引渡しは契約成立時に物が存在した場所で行われる。したがって、X社が自由に指定できるわけではない。


まとめ

本問では、契約・債権・会社法・知的財産法・労働法・相続法といった幅広い分野が出題されている。単なる暗記ではなく、実務でどう適用されるのかを考えることが重要だ。

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