はじめに
「外部モニターに繋いだ。よし、ノートPCの蓋を閉じてスッキリ作業開始だ」
そう思った矢先、プツンとブラックアウトする画面。静まり返るPC。
この「蓋を閉じると強制スリープ」という親切設計が、時には最大のストレスになる。特に外部ディスプレイやプロジェクターを使用する際、ノートPCのキーボード面は邪魔なだけだ。
Linux Mint 22(コードネーム:Wilma)は素晴らしいOSだが、デフォルトではバッテリー保護と省電力を優先する設定になっている。
だが恐れることはない。この挙動は完全に制御可能だ。
この記事では、Linux Mint 22のCinnamonデスクトップ環境をベースに、GUIによる手軽な設定から、設定ファイルを直接編集する「強制執行」テクニックまで、徹底的に解説する。
実施環境と前提
本記事は以下の環境に基づいている。特にデスクトップ環境の違いには注意が必要だ。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| OS | Linux Mint 22 (Based on Ubuntu 24.04 LTS) |
| Desktop | Cinnamon 6.2 (Mintの標準環境) |
| Manager | systemd-logind (電源管理のバックエンド) |
※MATEやXfce版を使用している場合も、後半の「設定ファイル編集」の手順は共通して有効だ。
【推奨】方法1:GUIでサクッと設定(Cinnamon標準)
まずは、黒い画面(ターミナル)を開く前に、Linux Mintが標準で用意している設定を確認しよう。これが最も安全で、副作用の少ない方法だ。
手順
- メニューから「設定(System Settings)」を開く。
- 「ハードウェア」セクションにある「電源管理(Power Management)」をクリック。
- 「電源オプション」タブを選択する。
ここで注目すべきは「蓋を閉じたときの動作」という項目だ。
デフォルトでは「サスペンド」になっているはずだ。これを以下のように変更する。
- 電源接続時: 「何もしない」
- バッテリー使用時: 「サスペンド」(または用途に合わせて「何もしない」)
これで設定画面を閉じれば完了だ。これだけで解決する場合がほとんどだ。
「なんだ、これだけか」と拍子抜けしたかもしれない。しかし、シンプルイズベスト。まずはこれを試すべきだ。
【確実】方法2:systemd設定ファイルによる「強制執行」
GUI設定だけでは、ログイン画面(ロック画面)に戻った際や、特定の状況下で依然としてスリープしてしまうことがある。
システムレベルで「蓋の開閉スイッチ」を完全に無視させるには、設定ファイル logind.conf を書き換えるのが確実だ。
ここでは、初心者にも優しいテキストエディタ xed(Mint標準)または nano を使用する。
1. 設定ファイルを開く
ターミナルを開き、以下のコマンドを入力する。管理者権限が必要なためパスワードが求められる。
sudo xed /etc/systemd/logind.conf
※コマンドライン派の人は xed の部分を nano や vi に置き換えてほしい。
2. パラメータの編集
ファイルが開いたら、以下の行を探し出す。多くの場合、コメントアウト(行頭に # がついている)されているはずだ。
#HandleLidSwitch=suspend
これを以下のように書き換える(# を削除し、値を変更する)。
[Login]
HandleLidSwitch=ignore
HandleLidSwitchExternalPower=ignore
HandleLidSwitchDocked=ignore
- HandleLidSwitch=ignore: どのような状況でも蓋スイッチを無視する。
- HandleLidSwitchExternalPower=ignore: 電源に繋いでいるときは無視する。
- HandleLidSwitchDocked=ignore: 外部モニター接続時(ドッキング時)は無視する。
ここまで細かく指定すれば、OSが誤解する余地はなくなる。
3. 設定の適用
ファイルを保存して閉じた後、以下のコマンドで設定を再読み込みさせる。再起動は不要だ。
sudo systemctl restart systemd-logind
※注意:このコマンドを実行すると、一度ログアウトされる場合がある。作業中のファイルは保存しておこう。
補足:画面ロックとスクリーンセーバーの制御
蓋を閉じてもPCは起きている。しかし、蓋を開けたらパスワードを求められる。
「セキュリティ上は正しいが、自宅で使う分には面倒だ」
そう感じるなら、スクリーンセーバーの設定も見直そう。
Cinnamonでの設定
- 「設定」>「スクリーンセーバー」を開く。
- 「設定」タブ内の以下の項目を調整する。
- 「スクリーンセーバー起動時に画面をロックする」: オフ
- 「サスペンドからの復帰時に画面をロックする」: オフ
これで、蓋を開けた瞬間に前回の作業画面が即座に表示されるようになる。
現場の知恵:プレゼンテーションモードを活用する
そんな時に使える「裏技」的なアプレットがある。
「Inhibit Applet(抑制アプレット)」
- パネル(タスクバー)を右クリックし、「アプレット」を選択。
- 「ダウンロード」タブでキャッシュを更新し、「Inhibit Applet」を検索してインストール。
- 「管理」タブに戻り、追加ボタン(+)を押す。
パネルに小さなアイコンが表示される。これをクリックするだけで、現在設定されているすべての省電力設定を一時的に無効化できる。
「今は映画を見たいからスリープさせない」「コンパイル中だから起きていてほしい」といった場面で、設定画面を開くことなくワンクリックで切り替えられる最高のツールだ。
注意点:熱対策を忘れるな
クラムシェルモード(蓋を閉じて使用)にはリスクもある。それは「排熱」だ。
最近のノートPCは、キーボードの隙間から吸気したり、ヒンジ部分から排熱したりする設計のものが多い。
- ファンが唸りを上げていないか?
- パームレストが異常に熱くなっていないか?
もし熱がこもるようなら、蓋を完全に閉めず、数センチだけ開けておくか、縦置きスタンドを活用して通気性を確保することをおすすめする。PCの寿命を守るのも、ユーザーの務めだ。
まとめ
Linux Mint 22でノートPCの蓋を閉じたまま運用するには、以下のステップを踏めばよい。
- まずは「電源管理」のGUI設定で「何もしない」を選択する。
- それでもダメなら、
/etc/systemd/logind.confでHandleLidSwitch=ignoreを設定する。 - 一時的な利用なら「Inhibit Applet」を活用する。
これで、あなたのLinux Mintマシンは、蓋が閉じられようとも沈黙することなく、忠実にタスクを処理し続けるだろう。
さあ、外部モニターに接続し、広大なデスクトップで快適なLinuxライフを楽しんでほしい。
参考リンク
- Linux Mint公式:電源管理に関するヘルプ
- systemd-logind.confの公式マニュアル
- GNOME Tweaks 公式ドキュメント
- dconf設定の概要と使い方(Ubuntu公式フォーラム)
- TLP公式:Linux用省電力ツール
- powertop公式(Intel開発の電力診断ツール)
- Cinnamon公式Wiki:Power SettingsとSleepの挙動


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