はじめに
ゲーム中にふとCPU温度を確認して、85℃や90℃という数字を目にすると、心臓が跳ね上がる。
「このまま使い続けて、PCが壊れないだろうか?」
「寿命が縮んでしまうのではないか?」
そんな不安を抱えるのは、君だけじゃない。
ネットの海には「70℃が理想」「90℃は限界」「100℃まで大丈夫」といった、矛盾だらけのアドバイスが溢れている。これでは混乱するのも無理はない。
この記事では、特にPCゲーマーが直面する「CPU温度の正解」について深掘りする。
この記事を読み終える頃には、自分のPCをどう扱うべきか、その確かな基準が手に入っているはずだ。
CPU温度の「安全地帯」はどこか?
まず、結論から言おう。ノートPCにおいて、ゲーム中のCPU温度が85℃〜90℃に達するのは「正常の範囲内」だ。
最近のゲーミングノートPC、特にRyzen 7やCore Ultraを搭載したモデルは、高い負荷がかかることを前提に設計されている。多くのCPUの耐熱限界(Tjunction MAX)は95℃〜100℃に設定されており、その手前で動いている分には、直ちに故障することはない。
目安となる温度表を以下にまとめた。
| 温度帯 | 状態の評価 | ユーザーのアクション |
|---|---|---|
| 40℃ – 60℃ | 低負荷・アイドル | 非常に健全。何も心配いらない。 |
| 60℃ – 80℃ | 理想的なゲーム中 | 冷却がうまく機能している。完璧だ。 |
| 80℃ – 90℃ | 一般的なゲーム中 | ノートPCでは標準的。気にする必要はない。 |
| 90℃ – 95℃ | 高負荷・警戒 | 性能低下(スロットリング)が始まる寸前。 |
| 95℃以上 | 危険域 | 冷却不足。設定の見直しや掃除が必要だ。 |
「デスクトップ」と「ノート」の常識を混同してはいけない
デスクトップPCは巨大な冷却ファンや水冷システムを備えているため、70℃台で安定するのが普通だ。
しかし、薄い筐体にパーツを詰め込んだノートPC(Acer Nitro 5など)で同じ基準を求めるのは酷というもの。ノートPCにとって、90℃は「頑張っている証」であり、致命傷ではないのだ。
なぜ「90℃超え」でも壊れないのか?
PCには、自分自身を熱から守る「サーマルスロットリング」という強力な防御本能が備わっている。
CPUが耐熱限界に達すると、システムは自動的に動作クロック(速度)を落とし、発熱を抑制する。
つまり、温度が上がりすぎて物理的に焼き切れる前に、PCが勝手に「手抜き運転」をして温度を下げるのだ。
それでも温度が下がらず危険なレベルになれば、PCは強制終了(シャットダウン)する。
「普通に使っていてCPUが熱で溶ける」という事態は、現代のPCではまず起こり得ないと考えていい。
「5年は使いたい」寿命への影響は?
「熱いまま使い続けると寿命が縮む」という意見も間違いではない。
しかし、電子機器の寿命は非常に長く、定格内の温度であれば、温度が原因で5年以内に壊れる確率は極めて低い。
むしろ、熱によるダメージよりも、「ファンの摩耗」や「ホコリの蓄積」といった物理的な要因、あるいは「OSやソフトウェアの陳腐化」の方が、買い替えの動機になるのが一般的だ。
もし5年以上の長寿命を目指すなら、温度そのものを過剰に怖がるよりも、以下の実践的なアクションプランを実行するほうがはるかに効果的だ。
すぐにできる!温度を下げる3つのアクション
「90℃でも大丈夫」とは言っても、精神衛生上、もう少し冷やしたいと思うのが人情だ。以下のステップを試してみてほしい。
1. 意外な伏兵「バックグラウンドアプリ」を消す
プレイしているゲームが比較的軽いにもかかわらず温度が高い場合、CPUを裏で食っているアプリがあるかもしれない。
- Wallpaper Engine
動く壁紙は、GPUだけでなくCPUにも意外な負荷をかける。ゲーム中は停止する設定にしよう。 - ブラウザのタブ
FirefoxやChromeで大量のタブを開いたままにすると、CPU使用率の底上げを招く。
2. 吸気口に「空気の通り道」を作る
ノートPCの冷却で最も重要なのは、底面からどれだけ新鮮な空気を吸えるかだ。
- 冷却パッド(クーラー)を使う
ファン付きのスタンドは数千円で買えるが、5〜10℃ほど劇的に温度を下げることもある。 - 底を浮かせる
冷却パッドがなくても、本などを置いてPCの後部を数センチ浮かせるだけで、空気の流れが改善する。
3. 「アンダーボルト」と「パワーリミット」
上級者向けだが、電圧を下げる「アンダーボルト」は非常に有効だ。ただし、Ryzenの一部のモデルでは設定が制限されていることもある。
- G-Helperなどのツール
Asus製品などで有名だが、CPUの電力制限(PL1/PL2)をわずかに下げるだけで、パフォーマンスを維持しつつ温度を10℃近く下げられる場合がある。
CPU温度を物理的にねじ伏せる!おすすめガジェット
ここでは、ソフトウェアの設定だけでは限界がある「熱」の問題を、物理的に解決してくれる頼もしい相棒たちを紹介しよう。
「冷やす」といっても、扇風機の風を当てるような原始的な方法から、本格的な冷却装置まで選択肢は幅広い。自分の環境に合ったものを選んでほしい。
強力な風圧で熱を奪う「ノートPC冷却パッド」
最もポピュラーで、かつ効果を実感しやすいのが冷却パッドだ。
特におすすめなのは、IETS GT500のような、密閉型で高回転ファンを搭載したモデル。
一般的な静音タイプのパッドは、気休め程度の温度低下(2〜3℃)に留まることが多い。しかし、強力なファンを備えたモデルは、底面から強制的に冷気を送り込み、筐体内部の熱を文字通り「押し出す」。ファンの音が大きいという欠点はあるが、ヘッドセットを付けてプレイするなら、10℃近い温度低下という圧倒的な恩恵の方が勝るはずだ。
排気をブーストする「吸引式クーラー」
ノートPCの排気口(横や後ろ)に直接取り付けるタイプだ。
これは内部の熱い空気を「吸い出す」ことで、空気の流れ(エアフロー)を加速させる。
冷却パッドと併用するとさらに効果的だが、排気口の形状によっては取り付けられないこともあるため、購入前に自分のPCの形をよく観察する必要がある。
究極の「隙間」を作るノートPCスタンド
ガジェットと呼ぶにはシンプルすぎるが、アルミ製の折りたたみスタンドは非常に優秀だ。
ノートPCの温度が上がる最大の原因は、底面とデスクの隙間が数ミリしかなく、新鮮な空気が吸えないことにある。
スタンドでPCを斜めに持ち上げ、底面に広い空間を作るだけで、吸気効率が劇的に改善する。電源も不要、持ち運びも楽。まずはここから始めるのが、最もコストパフォーマンスの高い「熱対策」と言える。
メンテナンスの必需品「エアダスター」
新しいPCならまだしも、半年から1年使ったPCの温度が上がってきたなら、犯人は「ホコリ」だ。
目に見えなくても、冷却ファンやヒートシンクには細かいホコリがびっしりと詰まっている。
月に一度、排気口や吸気口からエアダスターでシュッと一吹きする。これだけで、高価なガジェットを買い足すよりも劇的に冷えるようになることもある。
Note
温度そのものを下げるわけではないが、ゲーミングキーボードを導入するのも一つの手だ。
ノートPCのキーボード面が熱くなると、指先から伝わる熱が不快で「PCが壊れそう」という不安を増幅させる。外付けキーボードを使えば、本体が何℃になろうと指先は常にクールだ。
心理的な安心感と操作性の向上を考えれば、これも立派な「熱対策」の一環と言えるだろう。
まとめ
CPUが85℃〜90℃で推移していても、ゲームがカクつかず(スロットリングが起きず)、異音がしていなければ、そのPCは正しく動作している。
- ノートPCの90℃は、デスクトップの90℃とは意味が違う。
- PCは熱で壊れる前に自分を守る仕組みを持っている。
- 心配なら「底を浮かせる」ことから始めよう。
PCは道具だ。温度という数字に支配されて、せっかくのゲーミング体験を台無しにするのはもったいない。
95℃を超えない限り、安心して戦場へ戻ってほしい。

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