Google I/O 2025は「AIの秩序」を塗り替えたのか?話題投稿の真偽を検証する

備忘録

はじめに

Googleショックって聞いたことありますか?
いや、そう名付けたのは一部のジャーナリストか、あるいは過剰に騒ぎたいSNSユーザーかもしれない。でも、確かにあのGoogle I/O 2025には、AI界隈が一斉にザワつくだけの要素が詰まっていた。
そして、この騒動の渦中にあるのが「とあるAI界隈のユーザー」による投稿。真実なのか、脚色なのか。私自身の知見、そして業界の知人たちの話をもとに、冷静にファクトを積み上げてみたい。


スポンサーリンク
スポンサーリンク

話題の投稿内容

Google I/Oで「Googleショック」と呼んでもいいぐらいの衝撃が世界に広がってるが、その影響を1番受けるのはMicrosoft。
まずOpenAIは遅かれ早かれ淘汰される。これはどうしようもない運命。実際数字をみると火を見るよりも明らか。

OpenAIはキャッシュフローは常にマイナスで、10ヶ月ぐらいの周期で資金を注入してもらわないと文字通り不渡起こす自転車操業。
Googleはというと、アレだけの製品をリリースしておきながら、なんとFCFは26B USD、前年比で18%も増えてる。

キャッシュアウトには、当然莫大な数のGPUやデータセンターへの投資も含めての話。
OpenAIはそこらじゅうに金払って学習データ提供してもらってるのに、(いいか悪いかは別として)インターネット上のあらゆるデータに瞬時にアクセスできる。

今でこそ、手持ちの資金とデータでなんとかGoogleに張り合えているが、これあと2年続ける体力は残ってないだろう。
よって時間の経過とともに差は開いていくと見ている。瞬間のスナップショットを見るとブレはあるが、構造上、OpenAIが生き残る要素がないので時間の問題というのはそう言うこと。

そんで、誰が1番ババを引くかと言えばMicrosoft。まあ1番金を突っ込んでるわけだから当然そうなんだが、それだけじゃない。
かなり直近までCopilotや中核となる製品のコアにOpenAIのモデルを当てにしていたが、それが虫の息となれば、なんらか救済に乗り出さないといけない。

ところがMicrosoftのお財布事情にも限界がある上、他方必ずしもAIが関係しない大企業向けのクラウド市場での覇権争いをしているのがMS。
王者AWSはAIでこそ出遅れているが、直接AIが関係しない巨大なシステムを次々獲得していて、クラウド単体で見るとMSは遅れをとっている状況。

そんな「二面戦争」の様相で、両方から難題がふりかかるのがMicrosoft。大企業むけのクラウドというのは、AIの良し悪しだけで決まる単純な市場ではない。
特定業界の業務の専門知識を備えた営業部隊、クリティカルなシステムを支えるエンジニア集団など、組成に時間のかかる経営リソースが必要。

ここ2年ぐらい、Microsoftはお得意の「借り物競走」で優位に立ってきたが、その裏で半導体開発や、専門知識が必要な領域へ直接進出するなど、時間のかかる投資を避けてきた。
それがいよいよ仇となって降りかかって来てるのがここ1ヶ月ぐらいの話。

こうして振り返るとやはりリスクがあってもビルダー精神を失わず、不利に思われる状況でも自社で製品開発したり、専門的な顧客に売りにいく努力を怠らなかった企業が最後に残るな、という深い教訓。
借り物競走で勝てるのはほんの一瞬。それは前に投稿した、楽天vsAmazon勝敗も同じ。

Google I/Oの余波──「ショック」と呼ぶには大げさか?

確かに、今年のGoogle I/Oはひと味違った。Gemini Ultraの進化は単なるモデル更新ではない。
検索・Android・Workspaceと、全方位に染み込むようにAIを配置し、Googleは「OSそのものをAI化」する方向へと舵を切った。

あるエンタープライズ系スタートアップのCTOは、「まるでAPI経由でGoogleの知能を貸し出す時代になった」と語っていた。
こうした動きは、OpenAIの一社依存型サービスに対する“分散化の回答”とも取れる。

とはいえ、「Googleショック」という言葉が業界標準になっているかと言えば、それは違う。
センセーショナルな表現が、実態を上回った印象は否めない。


OpenAIは資金難か?──“自転車操業”の真意を探る

そのユーザーは「OpenAIは10ヶ月おきに資金が尽きる」と記していたが、そこは少し怪しい。
実際に資金調達は頻繁で、2025年3月にはSoftBankを中心に4兆円規模の投資が決定している。
しかし、これは単なる延命ではなく「次のフェーズへの備え」とも取れる。

とあるVC(ベンチャーキャピタル)のマネージャーは、「OpenAIは赤字企業だが、構造的にAmazonの初期と同じ」と断言していた。
儲ける気がないのではなく、まだ“投資モード”なのだという。

ただし、2029年までキャッシュフローがプラスにならない見込みというのは事実。
安定的とは言い難いが、即座に破綻するような話でもない。


GoogleのFCFに関する誤情報──26Bと72Bのギャップ

投稿には「Googleのフリーキャッシュフロー(FCF)が26Bドル」とあるが、それは四半期ベースならありえる数字で、年次では70B超が現実である。
数字の誤読は、意図的ではないかもしれないが、誤解を生むには十分すぎる。
実際にAlphabetのIR資料を見ると、2024年度通期でのFCFは74.9Bドル。前年よりも確かに増加しており、AI投資の果実を着実に収穫しつつある様子がうかがえる。

この事実一つとっても、投稿には多少の“脚色”があることは否定できない。


「OpenAIは淘汰される」は言い過ぎか

淘汰という言葉は、時に強すぎる毒を持つ。実際、OpenAIはMicrosoftと密接に連携し、収益も拡大傾向にある。
私の知る限り、あるSaaS企業のAI責任者は「むしろ今のOpenAIはGoogleよりAPIの進化が早い」と評していた。
データの取得・運用面ではGoogleに劣るが、それでもAPIとしての完成度は高く、商業的には非常に魅力的なのだという。

淘汰とは、競争に敗れ市場から退場すること。しかし今のOpenAIは、むしろ“主役級の競争者”である。


Microsoftは「借り物」だけか?──見えてきた自社開発の野望

その投稿では「Microsoftは借り物競走だ」と皮肉られていた。
確かにCopilotやAzure OpenAI Serviceの中身はOpenAI製であり、自社技術ではない。
しかし、だからといってMicrosoftが“依存”だけで動いているわけではない。

80Bドルを超えるデータセンター投資、そして最近では独自のAIモデル開発も報じられている。
知人のクラウドコンサルはこう言った。「MicrosoftはOpenAIを“学習素材”として使ってきた節がある」。

つまり、最終的には“借り物”を“自前”に変える腹積もりだ。


まとめ

とあるAI界隈のユーザーの投稿は、確かに刺激的だった。
が、情報の一部には誇張があり、数字に対する認識にもズレが見られる。

とはいえ、指摘された論点の多くは、業界の現在地とこれからを測る羅針盤として十分に価値がある。
だからこそ、我々は「真実か否か」だけでなく、「その言葉が何を投げかけているか」に注目すべきではないだろうか。

あなたはどう思う?AI業界の“秩序”は、もう誰かの手に委ねられているのだろうか。


参考リンク

コメント