はじめに
機械学習の分野では、データの次元が増えるほど計算コストが上がり、モデルの学習が難しくなることがある。この問題を解決するために「次元削減」が用いられる。その中でも代表的な手法が「主成分分析(PCA: Principal Component Analysis)」だ。
G検定でも頻出のテーマであり、機械学習の実務でも活用されるため、しっかりと理解しておきたい。今回は、G検定の過去問をもとに、主成分分析の基本と活用方法について解説する。
主成分分析(PCA)とは?
主成分分析(PCA)は、データの相関を考慮しながら、情報をできるだけ維持したまま次元を削減する手法だ。
高次元のデータを低次元に圧縮することで、以下のようなメリットが得られる。
✅ 計算コストの削減 → 高次元のデータを扱うと計算量が増えるが、次元を減らすことで処理を軽くできる。
✅ ノイズの除去 → 重要な情報を残しつつ、冗長なデータを削除できる。
✅ 視覚的なデータ分析 → 2次元や3次元にデータを変換することで、データのパターンを直感的に理解しやすくなる。
G検定の過去問をチェック
実際のG検定で出題された問題を見てみよう。
問題:
主成分分析の手法の説明として、最も適切な選択肢を選べ。
選択肢
- 弱学習器を並列に学習させて組み合わせる手法
- クラスタの重心に一番近い点を採用する手法
- マージンの最大化を行う手法
- 相関の少ない変数に着目し、次元削減を行う手法
✅ 正解は「4. 相関の少ない変数に着目し、次元削減を行う手法」
なぜ他の選択肢は誤りなのか?
G検定では「なぜ正解なのか」だけでなく「なぜ他の選択肢が間違いなのか」も理解しておくことが重要だ。
1. 「弱学習器を並列に学習させて組み合わせる手法」
誤り:アンサンブル学習(バギングなど)の説明
この説明は、アンサンブル学習(例えばランダムフォレスト)の考え方に当てはまる。弱学習器(個々のモデル)を複数組み合わせることで精度を向上させる手法であり、PCAとは関係ない。
2. 「クラスタの重心に一番近い点を採用する手法」
誤り:クラスタリング手法(k-means など)の説明
この説明は、クラスタリングアルゴリズム(k-means など)に関連する。クラスタの重心(センロイド)に最も近いデータ点を割り当てる手法であり、次元削減とは異なる。
3. 「マージンの最大化を行う手法」
誤り:サポートベクターマシン(SVM)の説明
マージンの最大化は、サポートベクターマシン(SVM)の考え方に基づく。PCAは次元削減の手法であり、SVMのように分類問題を解決するものではない。
主成分分析(PCA)の具体的な手順
PCAは、次の手順でデータを次元削減する。
- データの標準化
- 変数ごとにスケールが異なると結果が偏るため、平均0、分散1に正規化する。
- 共分散行列の計算
- 各変数の相関関係を分析する。
- 固有値分解(または特異値分解)
- 共分散行列を分解し、データの分散を最もよく表す「主成分(新しい軸)」を見つける。
- 主成分の選択
- 固有値が大きい主成分を選び、次元を削減する。一般的に「累積寄与率」が90%程度になるように主成分を選択する。
- 元のデータを主成分空間に投影
- 選んだ主成分の軸にデータを変換し、低次元化する。
実務での活用例
PCAは、実際のデータ分析や機械学習で広く使われる。
- 高次元データの可視化
- 例えば、顧客データや遺伝子データのように、多くの特徴量を持つデータを2次元や3次元に圧縮して可視化する。
- 特徴量の選択・前処理
- 冗長な特徴量を削減し、モデルの精度向上や過学習の防止に役立てる。
- 画像圧縮
- 画像データの次元を減らして、データ量を削減しながら情報を維持する。
まとめ
主成分分析(PCA)は、相関の少ない変数に着目し、次元削減を行う手法であり、データ分析において非常に有用な技術だ。
✅ G検定対策のポイント
– PCAの目的 → データの次元削減
– 計算手順 → 標準化 → 共分散行列 → 固有値分解 → 主成分選択 → 投影
– 試験での誤答対策 → 「アンサンブル学習」「クラスタリング」「SVM」と混同しないこと
試験対策としても、実務でのデータ分析としても、主成分分析をしっかりと理解しておこう。
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