はじめに
AI(人工知能)の研究や実装を進めるうえで、知識獲得の課題は避けて通れない。
G検定では、AIにおける「知識の扱い方」について頻出するテーマがある。特に、知識獲得のボトルネックについて問う問題は受験者を悩ませやすい。
今回は、実際のG検定過去問を例に、「知識獲得の課題とは何か?」を深掘りしながら、間違いやすい選択肢についても解説していく。
問題その1
AI研究の分野における知識獲得のボトルネックの課題として、最も不適切な選択肢を選べ。
選択肢
- 常識などの定義が困難である
- 専門家から体系だった知識を引き出し、システムを構築することが困難である
- 知識としてのルールの整合性や一貫性を保つのが困難である
- 知識を保存するためのコンピュータの容量拡大が困難である
正解は「4. 知識を保存するためのコンピュータの容量拡大が困難である」
正解の理由と各選択肢の解説
AIの知識獲得は、特にエキスパートシステムの開発初期において重要な課題とされてきた。
G検定の文脈では、「知識獲得の難しさ=知識の構造化・整合性・抽出」の文脈に沿って考える必要がある。
以下に、各選択肢の解説を示す。
| 選択肢 | 解説 | 適切かどうか |
|---|---|---|
| 1. 常識などの定義が困難 | 「常識」とは人間の文脈依存であいまいな知識のこと。AIにとって、定義も形式化も困難な領域であり、代表的なボトルネック。 | 適切 |
| 2. 専門家から体系だった知識を引き出し、システムを構築することが困難 | エキスパートシステムの構築時、専門家の知識を明示的に引き出す「ナレッジエンジニアリング」は非常に困難。知識獲得の典型的な課題。 | 適切 |
| 3. 知識としてのルールの整合性や一貫性を保つのが困難 | 知識ベースの肥大化に伴い、ルール同士の矛盾や不整合が起きやすい。これもAI研究における実務的な障壁。 | 適切 |
| 4. 知識を保存するためのコンピュータの容量拡大が困難 | 現代のストレージ技術では、保存容量は大きな問題ではない。物理的制約は技術的に解決済みであり、本質的なボトルネックではない。 | 不適切(正解) |
間違いやすいポイントと対策
この問題が難しい理由は、「一見もっともらしい選択肢」が紛れている点にある。
特に「容量の問題」は、かつては障壁だったが、現在では大規模知識ベースやクラウド技術の進展により、事実上の問題ではなくなっている。
ポイント
- AIにおける知識獲得のボトルネックは「人間の知識を形式化し、システムに取り込むことの困難さ」に集中している
- ハードウェア的な制約(記憶容量・計算能力)は近年では技術で克服されつつある
- 試験問題では「現在の課題かどうか」「技術的に克服されたかどうか」を見極めることが重要
知識獲得ボトルネックの代表例:現場の声
エキスパートインタビューの難しさ
実際にエキスパートシステムを構築しようとした企業の現場では、「専門家の暗黙知を明文化できない」ことにしばしば直面する。
例えば、ある医療現場のAI支援システム開発では、医師が直感的に判断している処置内容をルール化できず、システム化が難航したというケースがある。
知識の整合性維持の困難
また、業務知識が複数部門に分散している場合、それらを統合する際にルール間での矛盾が発生しやすい。
結果として、「例外処理だらけのルールベース」になり、メンテナンス不能になることも多い。
まとめ
G検定では、AIの構成要素や技術的課題について、単なる知識だけでなく「背景にある考え方の理解」が求められる。
今回の問題では、「知識獲得の本質的課題」と「技術的に解消された過去の課題」を区別できるかが重要なポイントだった。
✅ 知識獲得のボトルネックは、「人間の知識をAIに渡すプロセスの困難さ」
✅ 記憶容量やハードウェア的制約は、現代では大きな問題ではない
✅ 過去問の選択肢においては、背景知識をもとに冷静に判断する力が問われる
本番でも、「もっともらしいが、今は課題でない」選択肢に惑わされないよう注意していこう。


コメント