はじめに
企業が競争市場で成功するためには、競合との戦いに勝ち抜くか、あるいは競争がない市場を開拓する という2つの選択肢がある。
その中で、「ブルーオーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)」は、競争が激しい既存市場(レッドオーシャン)ではなく、競争が存在しない未知の市場(ブルーオーシャン)を創造する戦略 である。
本記事では、基本情報技術者試験(令和6年)科目A 問17 の問題を通じて、ブルーオーシャン戦略の概念と具体例 を解説する。
基本情報技術者試験(科目A)問17の問題
試験問題
マーケティング戦略におけるブルーオーシャンの説明として,適切なものはどれか。
ア. 競争が存在していない未知の市場
イ. コモディティ化が進んだ既存の市場
ウ. 新事業のアイディアを実際のビジネスに育成するまでの期間
エ. 製品開発したものを市場化する過程に横たわっている障壁
解答と解説
この問題の正解は 「ア. 競争が存在していない未知の市場。」 である。では、それぞれの選択肢が何を意味するのか詳しく見ていこう。
1. ブルーオーシャンとは?【正解:ア】
ブルーオーシャン戦略とは?
「ブルーオーシャン(Blue Ocean)」とは、競争が存在しない未知の市場を指す。つまり、新たな価値を創造し、他社との競争なしに独自の市場を確立する戦略 である。
これは、競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)とは対照的な概念 であり、従来のビジネスの枠組みを超えて市場を創造することを目的とする。
ブルーオーシャン戦略の特徴
- 競争のない市場を開拓する
- 他社と価格競争するのではなく、新たな顧客価値を提供する市場を作る。
- 価格競争に巻き込まれない
- 既存市場(レッドオーシャン)では、価格競争が激しく利益が圧迫されるが、ブルーオーシャンでは独自の価値を提供できるため、高い利益を確保できる。
- 新たな顧客層を獲得できる
- 既存の市場にない商品やサービスを提供することで、新たな顧客層を生み出す。
ブルーオーシャン戦略の具体例
① 任天堂 Wii(ゲーム業界)
- 競合のPlayStationやXboxは、高性能ハードウェアで競争していた(レッドオーシャン)。
- 任天堂は、家族や高齢者も楽しめるモーションコントロールを導入し、新市場を創出(ブルーオーシャン)。
② サーカス・デュ・ソレイユ(エンターテインメント業界)
- 従来のサーカスは動物ショーやアクロバットで競争(レッドオーシャン)。
- サーカス・デュ・ソレイユは、動物を使わず、演劇と融合した新しいサーカスを創出(ブルーオーシャン)。
③ Uber(交通業界)
- 既存のタクシー業界は価格競争や規制の影響を受ける市場(レッドオーシャン)。
- Uberは、アプリを活用したライドシェアサービスを提供し、新市場を開拓(ブルーオーシャン)。
このように、ブルーオーシャン戦略では、競争の激しい市場を避け、新しい市場を創造する ことが重要となる。
したがって、正解は 「ア. 競争が存在していない未知の市場」 である。
2. 各選択肢の説明
イ. コモディティ化が進んだ既存の市場【誤り】
「コモディティ化が進んだ既存の市場」
これは 「レッドオーシャン(Red Ocean)」 の説明であり、ブルーオーシャンとは正反対の概念である。
レッドオーシャンとは?
- 既存の市場で競争が激化している状況 を指す。
- 企業同士の競争が熾烈であり、価格競争や市場シェアの奪い合いが発生 する。
- 例:PC業界、スマートフォン業界(低価格モデル)など。
ブルーオーシャンは、このレッドオーシャンを避け、新たな市場を作る戦略 であるため、この選択肢は 誤り である。
ウ. 新事業のアイディアを実際のビジネスに育成するまでの期間【誤り】
「新事業のアイディアを実際のビジネスに育成するまでの期間」
これは 「タイムトゥマーケット(Time to Market)」 の説明であり、ブルーオーシャンとは異なる。
タイムトゥマーケットとは?
- 新しいビジネスや製品を市場に投入するまでの期間 のこと。
- 競争優位を確保するために、市場投入までのスピードが重要。
ブルーオーシャンは「新市場を創出する戦略」であり、「市場投入のスピード」を指すタイムトゥマーケットとは異なるため、この選択肢は 誤り である。
エ. 製品開発したものを市場化する過程に横たわっている障壁【誤り】
「製品開発したものを市場化する過程に横たわっている障壁」
これは 「死の谷(Death Valley)」 の説明であり、ブルーオーシャンとは異なる。
死の谷(デスバレー)とは?
- 新技術や新事業の開発段階から市場投入までの間に発生する資金的・技術的な障壁 を指す。
- スタートアップ企業が事業化に失敗しやすい期間とも言われる。
ブルーオーシャンは「新市場の創出」に関する概念であり、「市場化の障壁」を指す死の谷とは異なるため、この選択肢は 誤り である。
3. ブルーオーシャンと関連概念の違い
概念 | 説明 | 例 |
---|---|---|
ブルーオーシャン | 競争がない新市場を創出 | 任天堂Wii、サーカス・デュ・ソレイユ、Uber |
レッドオーシャン | 競争が激化した市場 | PC市場、スマホ市場、航空業界 |
タイムトゥマーケット | 製品を市場に投入するまでの期間 | 新製品の早期投入 |
死の谷(デスバレー) | 新技術の市場化を阻む障壁 | スタートアップ企業の資金難 |
まとめ
今回の試験問題では、「ブルーオーシャンの説明」として、
「競争が存在していない未知の市場」(ア) が正解だった。
ポイントの整理
✔ ブルーオーシャン戦略は、競争が激しい市場(レッドオーシャン)ではなく、新たな市場を創出する戦略。
✔ 他社との競争を避け、独自の価値を提供することで市場を確立する。
✔ レッドオーシャン、タイムトゥマーケット、死の谷とは異なる概念。
市場での成功を目指す企業は、競争の激しいレッドオーシャンを避け、新たな価値を提供するブルーオーシャンを狙うことが重要である。
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