はじめに
機械学習において、モデルの精度を高めることは非常に重要だ。しかし、高精度なモデルを作成したつもりでも、実際のデータに適用すると期待したような結果が得られないことがある。この原因の一つが「汎化誤差」だ。
特に、G検定では汎化誤差の要因について問われることが多い。今回は、G検定の過去問を題材にしながら、「バリアンス(分散)」について解説していく。
汎化誤差とは?
汎化誤差とは、モデルが訓練データだけでなく未知のデータに対しても適切な予測ができるかどうかを示す指標だ。機械学習の目的は、単に訓練データで高い精度を出すことではなく、新しいデータに対しても正しく予測できるようにすることにある。
汎化誤差は、大きく分けて次の3つの要素から構成される。
- バイアス(Bias)
- モデルの仮定が単純すぎるため、学習が十分に行われず誤差が生じる。
- バリアンス(Variance)
- モデルが訓練データに過剰に適合しすぎるため、汎化性能が低下する。
- ノイズ(Noise)
- データ自体に含まれる不確実性やランダムな要素による誤差。
では、G検定で出題された問題を見てみよう。
問題
実際のG検定で出題された問題を見てみる。
(●)は、汎化誤差の3つの要素の1つであり、予測モデルが複雑すぎることが原因で発生する。
選択肢
- オーバーフィッティング
- バリアンス
- バイアス
- ノイズ
正解は「2. バリアンス」
なぜ「バリアンス」が正解なのか?
バリアンス(分散)は、モデルが訓練データに過度に適応しすぎた結果、新しいデータに対して適切な予測ができなくなることを指す。この現象は オーバーフィッティング(過学習) の原因の一つでもある。
高バリアンスなモデルの特徴
- 訓練データに対しては非常に高い精度を示す
- しかし、テストデータや未知のデータに対しては精度が低下する
- 些細なデータの違いにも過敏に反応してしまう
例えば、ある学生が数学の試験対策として過去問の答えだけを丸暗記したとしよう。この学生は、過去問とまったく同じ問題が出れば満点を取れるかもしれない。しかし、少し問題の出し方が変わると、解けなくなってしまう。これは機械学習におけるバリアンスが高い状態と同じだ。
他の選択肢の解説
G検定では、正解を知るだけでなく「なぜ他の選択肢が誤りなのか」まで理解することが重要だ。
1. オーバーフィッティング(過学習)
オーバーフィッティングは、バリアンスが高すぎることによって発生する現象のひとつ。つまり、「バリアンスの増加」はオーバーフィッティングの原因となるが、汎化誤差の3要素として直接分類されるわけではない。
2. バイアス(Bias)
バイアスとは、モデルが単純すぎるために適切に学習できないことを指す。例えば、線形回帰モデルを使って非線形なデータを予測しようとすると、モデルはデータの複雑な関係を捉えきれず、大きな誤差を生む。これは アンダーフィッティング(過小適合) の原因となる。
3. ノイズ(Noise)
ノイズは、データ自体に含まれるランダムな誤差や外れ値の影響を指す。例えば、センサーデータには計測誤差が含まれることがあるが、これは機械学習モデルが改善できる要因ではない。
バリアンスを抑えるための対策
バリアンスが高すぎると、モデルは過学習を起こし、新しいデータに適応できなくなる。そのため、以下のような対策を講じることが重要だ。
1. データを増やす(データ拡張)
モデルが訓練データに過剰適合しないように、より多くのデータを学習させる。データのバリエーションが増えることで、特定のパターンに偏った学習を防げる。
2. 正則化(Regularization)を活用する
L1正則化(Lasso)やL2正則化(Ridge)を適用することで、モデルの複雑さを抑え、過学習を防ぐことができる。
3. モデルの複雑さを調整する
過剰に深いニューラルネットワークや過度に多くの特徴量を持つモデルは、バリアンスが高くなりやすい。必要に応じて層の数を減らしたり、特徴選択を行ったりすることで、モデルの汎化性能を高められる。
4. クロスバリデーションを活用する
K-foldクロスバリデーションを使って、モデルが新しいデータにも適応できるかを確認しながら訓練を進める。
まとめ
G検定の問題を通して、汎化誤差の要素である「バリアンス」について学んだ。
✅ バリアンスとは? → モデルが訓練データに過剰適合し、新しいデータでの精度が低下する原因となる要素。
✅ バリアンスが高いとどうなる? → 過学習(オーバーフィッティング)を引き起こし、汎化性能が低下する。
✅ 対策方法 → データを増やす、正則化を適用する、モデルの複雑さを調整する、クロスバリデーションを行う。
G検定を受験する際には、ただ暗記するのではなく、実際の機械学習の課題と照らし合わせながら理解を深めることが大切だ。試験対策だけでなく、実務においても役立つ知識なので、しっかりと押さえておこう。
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