はじめに
本問では、契約法、特許法、消費者契約法、代理、留置権についての問題が出題されている。各選択肢を詳しく解説しながら、正誤を判断していこう。
ア.契約に関する問題
【問題文】
契約に関する記述のうち、民法または商法の規定に照らして適切なものを選ぶ。
【解説】
- a.正しい
→ 不可抗力であっても金銭債務の不履行は免責されない(民法419条)。金銭債務は「代替可能」なものであるため、災害などによる履行不能でも履行遅滞となり、損害賠償の対象となる。 -
b.誤り
→ 請負契約は発注者側からはいつでも解除可能(民法641条)が、請負人(B社)は原則として一方的に解除できない。 -
c.正しい
→ 寄託契約では、受託者(A社)は善良な管理者の注意義務を負う(民法657条)。 -
d.誤り
→ 委任契約において、受任者(B社)は、報酬の有無に関係なく善良な管理者の注意義務を負う(民法644条)。
▶ 正解:①(ac)
イ.特許法に関する問題
【問題文】
特許法に関する記述のうち、最も適切でないものを選ぶ。
【解説】
- ① 正しい
→ 先願主義が適用され、最先に出願した者が特許を受ける(特許法39条1項)。 -
② 正しい
→ 特許権の存続期間は、原則として特許出願の日から20年間(特許法67条1項)。 -
③ 正しい
→ 特許権者は、侵害行為に対し「差止請求」「損害賠償請求」「信用回復措置請求」「不当利得返還請求」が可能(特許法100条、102条)。 -
④ 誤り
→ 特許権者が専用実施権を設定すると、専用実施権者が特許発明を独占的に実施でき、特許権者自身は自由に実施できない。
▶ 正解:④
ウ.消費者契約法に関する問題
【問題文】
消費者契約法に関する記述のうち、最も適切なものを選ぶ。
【解説】
- ① 誤り
→ 消費者契約法は、「商品販売」だけでなく、「役務提供」も対象(例:塾、ジム、携帯契約)。 -
② 正しい
→ 消費者契約法上の「事業者」には、法人だけでなく「個人事業主」も含まれる(消費者契約法2条1項)。 -
③ 誤り
→ 契約が取り消されると、事業者は受領した金銭を返還する義務を負う(消費者契約法4条)。 -
④ 誤り
→ 不当な免責条項は無効になるが、契約全体が無効になるわけではない(消費者契約法8条)。
▶ 正解:②
エ.代理に関する問題
【問題文】
代理に関する記述のうち、最も適切なものを選ぶ。
【解説】
- ① 正しい
→ 代理行為では、「本人のためにすること」を明示しないと、代理人自身の契約となる(民法100条)。 -
② 正しい
→ 表見代理が成立するには、第三者(C社)が代理権を信じた正当な理由が必要(民法109条)。 -
③ 誤り
→ C社がAに代理権がないことを知っていた場合は、Aに損害賠償を請求できない(民法117条)。 -
④ 正しい
→ 無権代理の場合、C社はB社に追認を催告できる(民法113条)。
▶ 正解:②
オ.留置権に関する問題
【問題文】
A社が修理代金未払いのトラックを留置する場合に関する記述。
【解説】
- a.誤り
→ 留置権が成立している場合、修理代金を受け取るまで引渡しを拒否できる(民法295条)。 -
b.正しい
→ 留置権がある場合でも、債権者(A社)が任意に引き渡したら留置権は消滅する(民法299条)。 -
c.誤り
→ 留置権者は、自己の裁量で物を売却して代金を回収することはできず、競売手続が必要(民法300条)。 -
d.正しい
→ 債務者(B社)が第三者(C社)に譲渡しても、留置権は主張可能(民法299条)。
▶ 正解:③(bd)
まとめ
設問 | 正解 | 解説 |
---|---|---|
ア | ①(ac) | 金銭債務は不可抗力で免責されない、寄託契約は善管注意義務がある |
イ | ④ | 専用実施権を設定すると、特許権者は自由に実施できない |
ウ | ② | 消費者契約法の「事業者」には個人事業主も含まれる |
エ | ② | 表見代理が成立するには、第三者が代理権を信じた正当な理由が必要 |
オ | ③(bd) | 留置権は任意の引渡しで消滅、第三者にも対抗できる |
この問題では、契約、代理、消費者保護、特許、留置権といった幅広い法分野が問われている。特に、「金銭債務は不可抗力でも免責されない」「無権代理の追認請求」「留置権の対抗要件」などは、実務でも重要な知識であるため、しっかりと理解しておこう。
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