はじめに
AIやビッグデータが社会に浸透するなかで、個人情報保護の重要性はますます高まっている。
G検定では、機械学習やデータ活用に関する知識だけでなく、倫理・法務の基礎も問われる。
今回はその一例として、「匿名加工情報」に関する過去問を取り上げ、正しい理解を深めていく。
実務でも誤解されやすい分野なので、確実に押さえておきたいテーマだ。
匿名加工情報とは?
「匿名加工情報」とは、特定の個人を識別できないように個人情報を加工し、元に戻せない形で提供・利用する情報を指す。
個人情報保護法においては、次の条件を満たす必要がある。
- 氏名や住所などの個人識別符号を削除する
- 他の情報と照合しても個人を特定できない状態にする
- 加工方法の漏えいを防止し、再識別のリスクを抑える
これらは、第三者提供や分析利用を目的とした場合に特に重要な要件である。
問題:匿名加工情報に関する不適切な行為はどれか?
実際のG検定で出題された問題を確認しよう。
「匿名加工情報」を作成する事業者が行うこととして、最も不適切な選択肢を選べ。
選択肢
- 自らが作成した匿名加工情報について、個人を識別するために他の情報と照合
- 個人識別符号の削除
- 特定の個人を識別することができる記述等の全部又は一部の削除
- 匿名加工情報の加工方法等情報の漏えい防止
正解は「1. 自らが作成した匿名加工情報について、個人を識別するために他の情報と照合」
なぜ「1」が不適切なのか?
匿名加工情報は、「再識別できないこと」が大前提だ。
1番の選択肢にある「他の情報と照合して個人を識別」する行為は、まさにこの前提を破るものである。
これは個人情報保護法において明確に禁止されている行為に該当する。
つまり、作成者自身であっても、「匿名加工情報から特定の個人を再識別しようとする行為」は認められていない。
他の選択肢はなぜ適切なのか?
以下に、他の選択肢が匿名加工情報において求められる行為である理由をまとめる。
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 2. 個人識別符号の削除 | 氏名・マイナンバーなどの識別情報を削除する | 匿名化の第一ステップ。これを行わなければ匿名加工情報とは呼べない |
| 3. 特定の個人を識別できる記述の削除 | 属性情報(例:社員番号、病歴など)を含め、識別可能な記述を取り除く | 再識別の余地が残らないよう、広範囲な配慮が必要 |
| 4. 加工方法等の情報漏えい防止 | 加工プロセスが第三者に知られないように管理する | 加工手順が漏れると、逆算して再識別される恐れがあるため、セキュリティ面で極めて重要 |
このように、2〜4はすべて匿名加工情報の作成や管理において、必要かつ合法的な対応である。
実務での注意点:再識別リスクとその対策
G検定では正解を覚えることも大切だが、実務でどう応用されるかをイメージすることも合格への鍵となる。
たとえば、企業がマーケティング分析のために購買データを匿名加工情報として第三者に提供する場合。
加工済みとはいえ、外部データと突き合わせれば再識別される可能性がある。
このリスクに対しては、以下のような実践的な対応が求められる。
- k-匿名化などの統計的手法を併用する
- アクセス制御や加工方法の社外非公開化を徹底する
- 再識別試験(逆推定できないかのテスト)を実施する
まとめ
G検定の法務・倫理分野では、「技術だけ知っている」では通用しない。
技術の使い方と、社会的責任の両方が問われる。
✅ 今回の要点は以下のとおり。
- 匿名加工情報は、個人を識別できない形に加工された情報
- 作成者であっても、再識別行為は違法
- 「識別符号の削除」「記述の削除」「加工方法の漏えい防止」は、適切な対応
G検定の合格を目指すなら、AIや統計の知識だけでなく、こうした法律・倫理面の理解も確実に押さえておこう。
実務でも求められるスキルとなるので、知識として身につけておく価値は大きい。


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