はじめに
G検定では、機械学習・深層学習に関する基本的な用語やアルゴリズムが頻繁に問われる。
中でも「次元圧縮」に関する出題は、ニューラルネットワークの応用を理解しているかどうかを問う重要なポイントだ。
本記事では、過去問を取り上げながら「次元圧縮に使われるアルゴリズム」の正解と、その理由について解説していく。
実際のG検定過去問を見てみよう
2006年にジェフリー・ヒントンらが提唱したニューラルネットワークを使用した次元圧縮のためのアルゴリズムとして、最も適切な選択肢を選べ。
選択肢:
- 自己符号化器(Autoencoder)
- 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
- 敵対的生成ネットワーク(GAN)
- 一気通貫学習(End-to-End Learning)
正解は「1. 自己符号化器(Autoencoder)」
なぜ「自己符号化器」が正解なのか?
自己符号化器(Autoencoder)は、2006年にジェフリー・ヒントンらによって提案された手法であり、主に次元圧縮を目的として利用されるニューラルネットワークの一種だ。
構造としては、入力データを一度圧縮(エンコード)し、それを再構築(デコード)するという流れを持つ。
これにより、データの本質的な特徴を保ったまま次元を削減することができる。
以下は自己符号化器の概略図:
入力データ → エンコーダ → 潜在変数(圧縮表現) → デコーダ → 出力データ
例えば、784次元の手書き数字画像(28×28ピクセル)を、32次元に圧縮し、その後再構成させるようなケースがある。
このように、データのノイズ除去や特徴抽出にも活用できる。
他の選択肢はなぜ間違いか?
G検定では、なぜ他の選択肢が誤りかも理解しておく必要がある。以下にそれぞれの用語の概要を示す。
| 選択肢 | 説明 | 誤りの理由 |
|---|---|---|
| CNN(畳み込みニューラルネットワーク) | 主に画像認識や特徴抽出で使われる | 次元圧縮そのものが目的ではなく、空間情報の保持と識別に重点がある |
| GAN(敵対的生成ネットワーク) | 画像生成などで使用される生成モデル | 生成目的であり、圧縮とは関係がない |
| 一気通貫学習(End-to-End Learning) | 入力から出力までを1つのモデルで処理する学習手法 | 学習の流れに関する概念であり、アルゴリズムの名称ではない |
つまり、「次元圧縮のためのニューラルネットワーク」という条件を満たすのは自己符号化器だけである。
自己符号化器の実装例(Python)
実際の開発現場では、自己符号化器はKerasやPyTorchなどを使って簡単に実装できる。
以下は、Kerasを用いたシンプルな自己符号化器の例だ。
from tensorflow.keras.models import Model
from tensorflow.keras.layers import Input, Dense
# 入力層
input_layer = Input(shape=(784,))
# エンコーダ
encoded = Dense(32, activation='relu')(input_layer)
# デコーダ
decoded = Dense(784, activation='sigmoid')(encoded)
# モデル定義
autoencoder = Model(inputs=input_layer, outputs=decoded)
autoencoder.compile(optimizer='adam', loss='binary_crossentropy')
このモデルでは、784次元の入力を32次元に圧縮してから再構築する仕組みになっている。
学習データには手書き数字のMNISTデータなどがよく使われる。
実務における活用シーン
自己符号化器は次のようなシーンで実用的に使われている。
- 画像のノイズ除去(Denoising Autoencoder)
→ 汚れた画像をクリーンな状態に復元する。 -
異常検知(Anomaly Detection)
→ 正常なデータをもとに学習させ、再構成誤差が大きいものを「異常」と判断する。 -
特徴量抽出
→ 次元を減らしつつも、重要な特徴を保持できるため、分類器の精度向上に貢献する。
これらの用途からも、自己符号化器が「単なる理論」ではなく、現場で活きる技術であることがわかる。
まとめ
G検定では、アルゴリズムの名前や定義だけでなく、「何のために使われるのか?」という目的まで理解しておく必要がある。
✅ Autoencoderは、次元圧縮を目的として設計されたニューラルネットワーク
✅ ジェフリー・ヒントンらによって提唱され、現在でも広く使われている技術
✅ 他の選択肢(CNN、GAN、End-to-End)は、それぞれ別の用途や概念に該当
このように、過去問を通じて概念を掘り下げていくことで、暗記ではなく本質的な理解につながる。
G検定を目指すなら、こうした知識を一つ一つ丁寧に押さえていこう。


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