はじめに
AI技術の発展とともに、自然言語処理(NLP)分野で用いられる基礎概念の理解は、G検定合格の鍵となる。中でも「分散表現(Distributed Representation)」は、頻出トピックのひとつだ。
今回は、G検定の過去問を取り上げながら、分散表現の代表的なモデルについて理解を深めていこう。
分散表現とは何か?
分散表現とは、単語や文といった言語情報を、数値のベクトルで表す手法のこと。これにより、コンピュータが言葉の意味や関係性を処理できるようになる。
例えば、「犬」と「猫」は意味的に近い言葉だが、分散表現ではこのような類似性を数値的に扱える。
代表的な手法として、Word2Vec、GloVe、FastTextなどがある。これらは単語を多次元のベクトル空間にマッピングし、単語間の関係をベクトルの距離や方向として表現する。
問題その1
実際のG検定で出題された問題を見てみよう。
ディープラーニングを用いた分散表現の代表的なモデルとして(●)がある。(●)では、文章中の単語を記号と捉え、文章を記号の集まりとすることで、記号をベクトルとして表現する。
選択肢
- Seq2Seq
- Text-to-Speech
- Word2Vec
- pix2pix
正解は「3. Word2Vec」
なぜ「Word2Vec」が正解なのか?
Word2Vecは、文章中の単語を記号として扱い、その出現パターンに基づいてベクトル表現を学習するモデル。これにより、意味的に近い単語は、数値的にも近いベクトルとして表現されるようになる。
学習には「CBOW(Continuous Bag of Words)」と「Skip-Gram」という2つの手法があり、前後の文脈を利用して単語のベクトルを生成する。
では、他の選択肢はなぜ不正解なのか?それぞれの特徴と分散表現との違いを確認しよう。
| 選択肢 | 説明 | 分散表現との関係 |
|---|---|---|
| Seq2Seq | 入力系列を別の系列に変換するモデル。主に機械翻訳やチャットボットに使われる。 | 分散表現を使う場合もあるが、目的は系列変換であり本質的に異なる。 |
| Text-to-Speech | テキストを音声に変換する技術。音声合成の一分野。 | 単語ベクトルとは関係が薄い。音声波形の生成が主な目的。 |
| pix2pix | 画像から画像への変換を行うGAN(敵対的生成ネットワーク)の一種。 | 画像処理技術であり、自然言語とは無関係。 |
Word2Vecの活用例
Word2Vecは、単にG検定の試験対策に留まらず、実務においても広く使われている。以下、具体的な活用事例を紹介する。
1. 類義語検索
Word2Vecを用いると、「王様」−「男」+「女」=「女王」といった演算が可能となる。
これにより、文章の意味処理や検索の高度化が実現できる。
2. クラスタリングによる分類
単語のベクトルを可視化してクラスタリングすることで、意味的に近い単語群をまとめることが可能となる。
例えば、スポーツ用語・医療用語・IT用語などを自動的に分類できる。
3. ニュース記事の類似性分析
ニュース記事に含まれる単語をWord2Vecでベクトル化し、記事同士の距離を測ることで、似ている記事を自動抽出することができる。
実装:Word2VecをPythonで試す
Pythonでは、Gensimライブラリを使うことで簡単にWord2Vecを実装できる。
サンプルコード
from gensim.models import Word2Vec
sentences = [
["AI", "は", "人間", "の", "言語", "を", "理解", "する"],
["ディープラーニング", "は", "強力", "な", "技術"]
]
model = Word2Vec(sentences, vector_size=100, window=5, min_count=1, sg=0)
vector = model.wv["AI"]
print(vector)
このように、任意の単語をベクトルとして取得できる。
vector_sizeやwindowなどのハイパーパラメータを調整することで、より精度の高いモデルが作成できる。
まとめ
G検定では、単語の意味を数値で扱う「分散表現」の知識が頻出する。中でも、Word2Vecは押さえておくべき基本中の基本だ。
✅ Word2Vecは、単語をベクトル化することで、意味的な関係性を捉える技術
✅ 自然言語処理のさまざまな場面で応用されており、試験対策だけでなく実務でも有効
✅ 類似語検索、文章分類、類似記事抽出など、現場での活用方法も多い
G検定に向けた学習だけでなく、NLPの理解を深めるためにも、Word2Vecを実際に使ってみることをおすすめする。


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