はじめに
AI技術が社会のさまざまな分野に浸透する中で、「なぜそのような結果になったのか」を説明できるAI――すなわち説明可能なAI(XAI)への関心が高まっている。
G検定では、このXAIに関する出題も見られるようになってきた。
今回は、G検定の過去問を通じて、XAIという概念とその関連団体について整理していこう。
XAI(説明可能なAI)とは?
XAIとは「Explainable AI」の略で、AIが出した結果に対して人間が納得できる理由や根拠を提示することを目的とした技術群を指す。
ディープラーニングのようなブラックボックス的手法が普及する一方で、AIの判断根拠が不透明だという批判も増えてきた。
そのため、軍事・医療・金融などの重要分野では、AIが出した答えに対して説明責任を果たせる仕組みが求められている。
DARPAとは?
DARPA(ダーパ)とは、アメリカ国防総省の研究開発機関であり、正式名称は「Defense Advanced Research Projects Agency(国防高等研究計画局)」という。
1958年、スプートニク・ショックへの対応として創設され、軍事・科学技術の先端研究を推進してきた。
DARPAが関わった代表的な技術には以下のようなものがある。
- インターネットの原型(ARPANET)
- GPSの基礎技術
- 自動運転車(Grand Challenge)
- ステルス技術
このように、DARPAは民間技術の未来を先取りし、軍事応用を視野に入れて開発投資を行う機関として知られている。
XAIプログラムもその一環であり、AIがどのようなプロセスで意思決定したのかを人間が理解できるようにするための研究開発に、数十億円規模の資金を投じている。
問題その1
実際のG検定で出題された問題を見てみよう。
XAI(Explainable AI:説明可能なAI)への投資プログラムを発表した団体として、最も適切な選択肢を選べ。
選択肢
- CIA
- DARPA
- 総務省
- KAIST
正解は「2. DARPA」
なぜ「DARPA」が正解なのか?
DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency、米国国防高等研究計画局)は、アメリカ国防総省の研究機関だ。
同機関は2016年にXAIプログラム(Explainable Artificial Intelligence program)を正式に発表し、説明可能なAIの研究開発に本格的に取り組んでいる。
DARPAのXAIプログラムでは、「人間の信頼を得られるAI」の実現を目的とし、ディープラーニングや強化学習モデルの内部判断を視覚化・解釈可能にする技術に資金を提供してきた。
他の選択肢はなぜ不正解なのか?
選択肢を一つひとつ検証してみよう。
| 選択肢 | 概要 | 誤りの理由 |
|---|---|---|
| CIA | アメリカ中央情報局。諜報活動を担うが、AI研究に関する公的投資プログラムは確認されていない。 | XAIに関する公式なプログラム発表がない。 |
| 総務省 | 日本の行政機関であり、AI研究支援は行っているが、XAIに特化した投資プログラムの発表はない。 | 国内研究の支援はしているが、XAIに限った国際的影響は薄い。 |
| KAIST | 韓国の理工系大学。AI研究で知られるが、DARPAのような資金投資機関ではない。 | 教育機関であり、XAI投資プログラムを主導していない。 |
このように、「XAIへの公的資金による明確な研究プログラム」を持つのはDARPAのみである。
XAIが求められる理由
ブラックボックス的なAIの課題は、以下のような場面で顕在化する。
- 医療:AIががんと診断した場合、その理由が説明できなければ医師は判断に使えない。
- 自動運転:事故が起きた際、AIがなぜその行動を選択したのかを説明できる必要がある。
- 軍事:兵器の制御にAIを使う場合、人間の判断を介さずに動くAIは倫理的・法的に問題となる。
つまり、AIの出す「結果」だけでなく「過程」も求められているのだ。
XAIの代表的な技術例
XAIにはさまざまな技術が存在する。代表的なものを紹介しよう。
| 技術 | 概要 |
|---|---|
| LIME(Local Interpretable Model-agnostic Explanations) | 任意のモデルの判断理由を局所的に説明する手法。 |
| SHAP(SHapley Additive exPlanations) | 各特徴量が予測結果にどれほど貢献したかを定量化する。 |
| 可視化技術(Grad-CAMなど) | 画像認識の過程をヒートマップで可視化する。 |
これらは、ディープラーニングのような複雑なモデルの「中身」を人間が理解できる形に翻訳するためのアプローチだ。
XAIは今後ますます重要に
説明可能性の確保は、AIが社会で信頼され、受け入れられるための鍵を握っている。
DARPAのような機関が資金を投じるという事実は、XAIが単なる技術トレンドではなく、国家レベルの重要課題と認識されていることの表れだ。
まとめ
G検定では、技術そのものだけでなく、「それに関連する団体や動向」を問う問題も出題される。
今回のように、XAIの投資プログラムを発表した機関としてDARPAを選べるようになるには、技術と政治・政策とのつながりを押さえておく必要がある。
✅ XAIとは? → AIの判断根拠を説明できるようにする技術群
✅ DARPAの役割 → XAIプログラムを通じて説明可能なAI研究を推進
✅ G検定対策 → 技術に関連する国際的な機関や政策動向もチェックしておこう
G検定を目指す受験者は、こうした背景知識も含めて、「知っている」だけでなく「理解している」状態を目指そう。


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