はじめに
渾身の力作を書き上げ、公開ボタンを押し、数日後に管理画面を開く。
そこに並ぶPV数「1」という数字を見て、膝から崩れ落ちるような感覚を味わったブロガーは少なくない。
そのたった一回のアクセスすら、公開後の動作確認をした自分自身の足跡に過ぎなかったりする。
どれほど高度な技術を凝縮し、磨き抜かれた情報を載せたとしても、それが誰かの困りごとと重なっていなければ、その記事はインターネットの海で存在しないも同然だ。かつての私はこの残酷な事実に気づかず、ただ虚空を見上げて「ネタがない」と嘆いていた。
しかし今は断言できる。ブログのネタ探しに、天性のセンスや才能など一片も必要ない。
向き合うべきは自分の中にある「書きたい欲」ではなく、市場に転がっている客観的なデータだ。ネタ探しを個人の感覚から、再現性のある仕組みへと昇華させる。その重要性に気づくまでに、ずいぶんと遠回りをしてしまった。
失敗の末に辿り着いた、読まれるネタを最短で特定するための三つの段階を記す。
ユーザーの苦悩をラッコキーワードで暴き出す
自分の頭の中にある抽象的なテーマを、世の中の検索語句という具体的なニーズに変換する作業から始める。
ここで重宝するのがラッコキーワードだ。愛くるしいアイコンに油断してはいけない。このツールは、その可愛い顔の裏でユーザーが抱える生々しい不満を容赦なく暴き出す冷徹な分析官として機能する。
例えば、単に「Python」というテーマで書こうとしても範囲が広すぎて焦点がぼやける。
そこでツールを使い、ユーザーが実際に検索しているサジェストキーワードを洗い出す。単語の広がりを可視化すれば、基本的な使い方といったありふれた言葉だけでなく、状態管理の比較や、特定のフックにおける依存配列の失念といった、より具体的で鋭い悩みが見つかる。
検索語句の背後には必ず困りごとがある。
単にキーワードを眺めるのではなく、どの言葉に一番強い、切実な痛みを感じるかという視点でターゲットを絞り込まなければならない。提示されるデータは、迷えるライターにとっての確かな海図となる。
上位十サイトから正解の型を読み解く
ターゲットとなるキーワードが定まったら、次は検索結果のトップ10に並ぶサイトを徹底的に観察する。
ここに並ぶ記事は、現時点での検索エンジンからの回答そのものだ。ここでの目的は他者の真似をすることではない。検索エンジンが「この記事は役に立つ」と公式に判断した、共通の構成要素を抽出することにある。
上位サイトを調査する際は、その記事が初心者向けか、あるいは現場の実務経験者向けかといったターゲット層をまず見極める。
次に解決している課題がエラーの即時解消なのか、それとも概念の深い理解なのかを分類していく。どの記事にも必ず含まれている避けて通れないトピックが見えてきたなら、それがそのキーワードにおける必須要素だ。
まずはこの土俵に立ち、読者の最低限の期待に応える準備を整える。
共通項を見つけ出す作業は、その分野における正解の型を自分の中にインストールする作業に他ならない。
違和感をメモして独自性を宿す
ここが最も重要で、かつ技術ブログを書く醍醐味と言える。
上位サイトを読み込みながら、自分の内側に湧き上がる小さな違和感を徹底的に拾い上げる。公式ドキュメントの直訳のような無機質な説明で、具体例が足りないと感じないか。あるいは、解説が丁寧すぎて忙しいエンジニアが結論に辿り着くのを邪魔していないか。今のバージョンでは動かない古い手順が放置されていないか。
このモヤモヤとした感覚こそが、あなたの記事が選ばれる理由、すなわち独自性の種になる。
コードは載っているが設計の理由が書かれていないなら、その理由を深く掘り下げる。理論は完璧だが現場での例外パターンに触れていないなら、自分の失敗談を添えて補完する。
上位サイトがカバーしている必須情報に、あなたが見つけた情報の不足や不親切を埋める実体験を組み合わせる。
この最後の欠片をはめ込んだとき、記事は単なる情報のまとめを超え、読者にとって唯一無二の価値を持つようになる。
まとめ
技術ブログのネタ探しとは、何もない宇宙から星を生み出すようなクリエイティブな作業ではない。
需要の範囲を正確に把握し、現在の正解を冷ややかに分析し、そこに自分だけの熱量を持った補足を加える。この工程を繰り返すだけで、読者のニーズを外さず、かつ自分にしか書けない視点を持った記事が驚くほどスムーズに書けるようになる。
何を書くかで迷い、白い画面を前に絶望する時間はもう終わりだ。まずは今、自分が一番伝えたい言葉を検索窓に打ち込むことから始めてみてほしい。

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