【ビジネス実務法務検定試験3級】第48回試験 第7問の解説

ビジ法対策

はじめに

本問では、不法行為、損害賠償、商行為、商事留置権、連帯債務、代理に関する問題が出題されている。それぞれの選択肢について詳しく解説していこう。


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問題 第7問

次の文中の[ ]の部分に,後記の語群から最も適切な語句を選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。

7-1:不法行為と損害賠償

7-1:問題文

他人の行為によって損害を被った被害者が,加害者に対し不法行為に基づく損害賠償請求をするためには,民法上,加害者に[ア]があることが必要である。
[ア]とは,加害行為による法律上の責任を弁識するに足りる能力のことである。[ア]を欠く者の行為には不法行為は成立しないが,被害者は,その者の親権者などの[イ]に対する損害賠償請求が認められる余地はある。
不法行為の被害者が,加害者から損害賠償を受けたことにより,かえって利益を得ることは好ましくない。そこで,加害者と被害者との間の損害賠償を公平に行うために,損害賠償の算定にあたっては,[ウ]や[エ]によって,損害賠償額の調整が行われることがある。被害者が,加害者に対し不法行為に基づく損害賠償請求をするにあたり,被害者にも落ち度がありそれが損害発生の一因となった場合,損害の公平な分担の見地から,損害賠償の額から被害者の落ち度に応じた一定額が差し引かれることがある。これを[ウ]という。[ウ]をする前提として,被害者には[オ]が必要とされるが,[オ]は[ア]とは異なり,物事の善し悪しが判断できる程度の能力があれば足りるとされる。
また,例えば,被害者が不法行為によって損害を受ける一方で何らかの利益を受けた場合には,その利益の額を差し引いて損害賠償の額が決定されることがある。これを[エ]という。

7-1:語群

① 不当利得 ② 弁済能力
③ 監督義務者 ④ 過失相殺
⑤ 情状酌量 ⑥ 受託者
⑦ 債務不履行 ⑧ 損益相殺
⑨ 財産管理人 ⑩ 代理能力
⑪ 責任能力 ⑫ 代理権
⑬ 事務管理 ⑭ 相殺契約
⑮ 事理弁識能力

ア.責任能力

加害者に[ア]があることが必要である。

【解説】

不法行為に基づく損害賠償請求をするには、加害者に「責任能力」が必要である(民法712条)。これは、自分の行為の違法性を理解し、それに基づいて行動できる能力を指す。

▶ 正解:⑪ 責任能力


イ.監督義務者

被害者は、その者の親権者などの[イ]に対する損害賠償請求が認められる余地はある。

【解説】

責任能力のない者(例:幼児や精神障害者)が加害者である場合、その親権者や監督義務者が「監督義務者責任」(民法714条)を負う可能性がある。

▶ 正解:③ 監督義務者


ウ.過失相殺

被害者にも落ち度がある場合、損害賠償の額が減額される。これを[ウ]という。

【解説】

被害者にも過失がある場合、損害賠償の公平を図るため「過失相殺」(民法722条)により、損害賠償額が減額される。

▶ 正解:④ 過失相殺


エ.損益相殺

被害者が不法行為により損害を受けつつも利益を得た場合、その利益を考慮する。これを[エ]という。

【解説】

不法行為による損害賠償請求の際に、被害者が同じ出来事によって利益を得た場合、その利益分を差し引くことを「損益相殺」という。

▶ 正解:⑧ 損益相殺


オ.事理弁識能力

被害者には[オ]が必要とされる。

【解説】

事理弁識能力」は、善悪を判断する程度の能力を指し、過失相殺の適用にはこの能力が必要である。

▶ 正解:⑮ 事理弁識能力


7-2:商行為

7-2:問題文

商法上,商行為には,商人であるか否かにかかわらず,何人が行っても常に商行為となる[ア]と,営業として反復的に営むときには商行為となる営業的商行為がある。このほか,商人が営業のためにする補助的な行為も商行為とされ,これを[イ]という。
商法は,商取引における集団性,反復性および定型性の観点や迅速な取引の要請から,民法の原則に様々な修正を加えている。まず,商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは,債権者は,その債権の弁済を受けるまで,その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物または有価証券を留置することができるとされており,これを商事留置権という。被担保債権が留置物について生じたこと,すなわち[ウ]が必要である民法上の留置権と異なり,商事留置権は,留置物が留置者の占有に属するに至った原因が被担保債権の発生とは異なる原因であってもよいという点に意義がある。
また,一人の債権者に対して,複数の債務者が存在する場合,債務は,民法の原則では[エ]となるが,商法上は連帯債務となる。これは,商行為に基づく債権債務の実効性を強める趣旨である。
さらに,例えば,代理行為に関して,民法の原則においては,代理人が本人のために行為することを相手方に示すこと,すなわち[オ]をせずにした行為は,原則として,当該代理人のためにしたものとみなされ,その行為の効力は本人に帰属しない。これに対し,商行為の代理人が[オ]をしないでその行為をした場合には,原則として,その行為は本人に対してその効力を生ずる。

7-2:語群

① 補充的商行為 ② 顕名
③ 継続的商行為 ④ 絶対的商行為
⑤ 不可分債務 ⑥ 委任
⑦ 附従性 ⑧ 分割債務
⑨ 対価的商行為 ⑩ 金銭債務
⑪ 客観的商行為 ⑫ 牽連性
⑬ 附属的商行為 ⑭ 対価性
⑮ 授権

ア.絶対的商行為

何人が行っても常に商行為となる[ア]

【解説】

商法では、商人かどうかに関わらず、行為自体が商行為とされるものを「絶対的商行為」という。例:手形の振出し、為替取引、銀行業務など。

▶ 正解:④ 絶対的商行為


イ.附属的商行為

商人が営業のために行う補助的な行為。

【解説】

商人が営業活動を行う中で発生する行為を「附属的商行為」という。例えば、商人が営業資金の借入れをする行為など。

▶ 正解:⑬ 附属的商行為


ウ.牽連性

商事留置権では、民法上の留置権のように[ウ]が必要ない。

【解説】

民法上の留置権では、債権と留置物との間に密接な関連性(牽連性)が必要だが、商事留置権では必須ではない。

▶ 正解:⑫ 牽連性


エ.分割債務

一人の債権者に対し、複数の債務者がいる場合、民法の原則では[エ]となる。

【解説】

民法上、連帯債務の特約がない限り、各債務者は「分割債務」を負う(民法427条)。

▶ 正解:⑧ 分割債務


オ.顕名

代理行為では、代理人が本人のために行うことを示す[オ]が必要。

【解説】

代理行為では、代理人が本人のために行うことを示す必要があり、これを「顕名」という。商法では、顕名がなくても契約が本人に帰属する場合がある。

▶ 正解:② 顕名


まとめ

設問 正解 解説
7-1 ア ⑪ 責任能力 不法行為に責任を負う能力
7-1 イ ③ 監督義務者 責任能力のない者の監督者に責任が及ぶ
7-1 ウ ④ 過失相殺 被害者の過失に応じて損害賠償を減額
7-1 エ ⑧ 損益相殺 被害者が得た利益を損害賠償から控除
7-1 オ ⑮ 事理弁識能力 善悪の判断ができる程度の能力
7-2 ア ④ 絶対的商行為 何人が行っても商行為とみなされる行為
7-2 イ ⑬ 附属的商行為 商人が営業活動のために行う補助的な行為
7-2 ウ ⑫ 牽連性 民法の留置権では必要だが、商事留置権では不要
7-2 エ ⑧ 分割債務 連帯債務の特約がない限り、民法上の原則
7-2 オ ② 顕名 代理行為では本人のためにすることを明示

この問題では、不法行為の責任能力、監督義務者責任、損害賠償の算定要素、商行為の分類、商事留置権、商法の連帯債務、代理の原則など、重要な法律概念が問われている。特に、「責任能力と監督義務者」「過失相殺と損益相殺」「絶対的商行為と附属的商行為」「商事留置権と牽連性」の違いを理解しておくと、試験や実務に役立つだろう。

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