【ビジネス実務法務検定試験3級】第48回試験 第3問の解説

ビジ法対策

はじめに

本問では、独占禁止法、債務不履行、会社法、抵当権、行為能力の5つのテーマについて問われている。それぞれの問題について適切な選択肢を解説していこう。


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問題

次のア~オの設問に答えなさい。


ア.独占禁止法

独占禁止法に関する次の①~④の記述のうち,その内容が最も適切なものを1つだけ選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
① 独占禁止法上,事業者は,商業,工業,金融業その他の営利事業を行う者をいい,営利を目的としない公益法人や公共団体は事業者に該当しない。
② 不当な取引制限に当たる行為は,公正取引委員会による課徴金納付命令の対象とはならないが,排除措置命令の対象とはなる。
③ 事業者が,他の事業者との間で,製品の出荷量を制限する協定を締結し,その協定に基づいて,制限された量の製品のみを出荷する行為は,不当な取引制限に該当しない。
④ 事業者が,市場シェアを拡大するため,正当な理由がないのに,製造原価を大幅に下回る価格で自社製品の販売を継続した結果,競合他社の販売活動が困難となった。この場合,当該事業者の行為は,公正な競争を阻害するおそれがあるときは,不当廉売として不公正な取引方法に当たる。

【解説】

各選択肢を検討する。

① 誤り
→ 公益法人や公共団体も、事業を行う限り事業者に該当するため誤り。

② 誤り
→ 不当な取引制限(カルテル等)は、公正取引委員会の排除措置命令だけでなく課徴金納付命令の対象にもなる。

③ 誤り
→ 出荷量を制限する協定は、競争を制限するカルテルに該当し、不当な取引制限となる。

④ 正しい
→ 製造原価を大幅に下回る価格で販売し、競合の市場競争を阻害する行為は不当廉売(ダンピング)に該当し、不公正な取引方法として禁止されている。

▶ 正解:④


イ.債務不履行

債務不履行に関する次のa~dの記述のうち,その内容が適切なものを○,適切でないものを×としたときの組み合わせを①~④の中から1つだけ選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
a.一般に,債務者が債務を履行できるのに,履行期限までに債務を履行しないことを履行遅滞という。
b.一般に,契約を締結した時点では履行が可能だった債務が,履行ができなくなったことを履行不能という。
c.一般に,債務は履行されたが,目的物に不具合があるなどの不完全な履行で,債務の本旨に従った履行といえない場合を不完全履行という。
d.債務不履行による損害賠償の対象となる損害は,債務不履行により通常生ずべき損害であり,特別の事情によって生じた損害については,当事者がその特別の事情を予見すべきであったとしても,損害賠償の対象とはならない。

① a-○  b-○  c-○  d-○
② a-○  b-○  c-○  d-×
③ a-×  b-○  c-×  d-○
④ a-×  b-×  c-×  d-○

【解説】

a.○(正しい)
→ 債務者が履行できるのに期限までに履行しない場合、「履行遅滞」となる。

b.○(正しい)
→ 契約締結時には履行可能だったが、後に履行不能となった場合は「履行不能」となる。

c.○(正しい)
→ 目的物に不具合があるなど、不完全な履行は「不完全履行」となる。

d.×(誤り)
→ 債務不履行による損害賠償は、「通常生ずべき損害」のみならず、「特別の事情による損害」も、当事者が予見可能であれば賠償対象となる。

▶ 正解:②(a-○、b-○、c-○、d-×)


ウ.会社法(公開会社の機関)

A株式会社は,会社法上の公開会社であるが,監査等委員会設置会社ではなく,かつ,指名委員会等設置会社でもない。A社の機関に関する次のa~dの記述のうち,会社法の規定に照らし,その内容が適切なものの組み合わせを①~④の中から1つだけ選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
a.A社の取締役Bが自己のためにA社の事業の部類に属する取引をしようとするときは,Bは,A社の取締役会において,当該取引につき重要な事実を開示し,その承認を受けることを要する。
b.代表取締役は,対外的に会社を代表する機関であるから,A社において選定することができる代表取締役は1名のみである。
c.会社法の規定に基づき,A社の株主Cが,A社に対し,A社の取締役Dの責任を追及する訴えの提起を請求したにもかかわらず,所定の期間内にA社が訴えを提起しなかった場合,Cは,A社に対するDの責任を追及する訴え(株主代表訴訟)を提起することができる。
d.A社の監査役Eは,A社の取締役等の機関の職務執行やA社の計算書類を監査する権限を有するが,A社の取締役等に対して事業の報告を求める権限は有しない。

① ac
② ad
③ bc
④ bd

【解説】

a.○(正しい)
→ 取締役が会社の事業に関連する取引を行う場合、取締役会の承認を得る必要がある。

b.×(誤り)
→ 代表取締役は1名に限られず、複数選任できる。

c.○(正しい)
→ 株主が取締役の責任を追及する訴訟を会社に求めても訴えが提起されない場合、株主代表訴訟が可能。

d.×(誤り)
→ 監査役は取締役に対して事業報告を求める権限を有する。

▶ 正解:①(ac)


エ.抵当権

A社は,Bに金銭を貸し付けるにあたり,Bが所有する建物に抵当権の設定を受けることを検討している。この場合に関する次の①~④の記述のうち,その内容が最も適切なものを1つだけ選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
① 抵当権設定契約の効力が発生するのは,A社とBが抵当権設定契約を締結した時ではなく,抵当権の設定登記がなされた時である。
② A社が本件建物に抵当権の設定を受けた場合,その抵当権の被担保債権は,民法上,A社がBに貸し付けた金銭の元本の請求権のみであり,利息の請求権を抵当権で担保することはできない。
③ A社が本件建物に抵当権の設定を受け,その旨の登記を経た後,本件建物は火災で焼失した。Bが本件建物に火災保険を付していた場合,A社は,Bの火災保険金請求権をその払渡しの前に自ら差し押さえて,物上代位権を行使し,Bが受け取るべき火災保険金から自己の債権を回収することができる。
④ BがすでにC社のために本件建物に抵当権を設定している場合,A社は,本件建物に抵当権の設定を受けることはできない。

【解説】

① ×(誤り)
→ 抵当権設定契約の効力は、契約締結時に発生し、登記がなければ第三者に対抗できないだけである。

② ×(誤り)
→ 抵当権は、元本の請求権だけでなく利息の請求権も担保できる。

③ ○(正しい)
→ 抵当権の目的物が焼失し、火災保険金が支払われる場合、物上代位により、抵当権者は保険金請求権に対して優先的に回収できる。

④ ×(誤り)
→ すでにC社が設定した抵当権があっても、A社は「第二抵当権」を設定可能。

▶ 正解:③


オ.行為能力

行為能力に関する次の①~④の記述のうち,その内容が最も適切でないものを1つだけ選び,解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
① 成年後見人Aは,成年被後見人Bを代理して,Bが第三者Cから金銭を借り入れる旨の金銭消費貸借契約を締結した。この場合,Bは,当該金銭消費貸借契約を取り消すことができる。
② 被保佐人Aは,保佐人Bの同意を得ずに自らが所有する土地を第三者Cに売却する旨の売買契約を締結した。この場合,Bは,当該売買契約を取り消すことができる。
③ 未成年者Aは,法定代理人Bの同意を得て,第三者Cからパソコンを買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合,Aは,当該売買契約を取り消すことができない。
④ 未成年者Aは,自らを成年者であると信じさせるため,電器店の店主Bに詐術を用い,それを信じたBから大型液晶テレビを購入する旨の売買契約を締結した。この場合,Aの法定代理人Cは,当該売買契約を取り消すことができない。

【解説】

① ×(誤り)
→ 成年後見人が代理で契約した場合、成年被後見人は契約を取り消せない。

② ○(正しい)
→ 被保佐人が保佐人の同意なしに重要な財産行為(不動産売却など)を行った場合、保佐人が取り消し可能。

③ ○(正しい)
→ 未成年者が法定代理人の同意を得て契約した場合、契約は有効となり、取り消せない。

④ ○(正しい)
→ 未成年者が詐術を用いた場合、未成年であることを理由に契約を取り消すことはできない。

▶ 正解:①(誤りなので最適でない記述)


まとめ

設問 正解 解説
不当廉売は不公正な取引方法に該当する
dの記述が誤り(特別損害も賠償対象)
取締役の競業取引は承認が必要、株主代表訴訟は可能
物上代位により火災保険金請求権を差し押さえられる
成年後見人の代理契約は被後見人が取り消せない

この問題では、各法律の基本原則を正しく理解し、条文の趣旨を把握することが重要だ。企業法務や実務に関連する項目も多いため、試験対策としてだけでなく、日常業務の知識としても活用できる。

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