はじめに
個人情報保護に関する法律が強化される中、GDPR(一般データ保護規則)は、AI技術を扱う企業やデータサイエンティストにとって避けては通れない知識だ。
このGDPRの特徴の一つとして、「データの持ち運び」に関する権利があることをご存じだろうか?
G検定の試験では、この「データポータビリティ」に関する問題が出題されることがある。
本記事では、実際の過去問をもとにGDPRの「データポータビリティの権利」について解説する。
データポータビリティの権利とは?
GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)は、EUにおいて2018年に施行された個人データ保護のための規則だ。
この中で、「データポータビリティの権利(Right to Data Portability)」は、ユーザーが自身のデータを自由に移動させることを可能にする権利を指す。
データポータビリティの主な特徴
- 利用者が自身のデータを取得できる
- ユーザーは、企業が保持する個人データを取得し、他のサービスで再利用できる。
- 機械可読なフォーマットで提供
- 企業はデータをCSVやJSONなどの機械可読な形式で提供する義務がある。
- 他のサービスへデータを移転可能
- 例えば、あるクラウドストレージサービスから別のクラウドストレージサービスへデータを移動することができる。
この権利があることで、ユーザーは特定の企業に縛られず、より柔軟にサービスを選択できるようになる。
G検定で出題された問題を見てみよう。
問題
GDPRの特色として、あるサービスが特定のユーザーに関して収集・蓄積した利用履歴などのデータを他のサービスでも再利用できること、すなわち持ち運び可能である(●)の権利を認めている。
選択肢
- データエコシステム
- データユーティリティ
- データリユース
- データポータビリティ
✅ 正解は「データポータビリティ」
では、この「データポータビリティの権利」とは何なのか?
なぜ他の選択肢ではダメなのか?
G検定では、誤った選択肢と正解の違いを理解することが重要だ。
なぜ他の選択肢は正解にならないのか、整理してみよう。
選択肢 | 誤りの理由 |
---|---|
データエコシステム | データエコシステムとは、データが複数の企業や組織間で共有され、相互に活用される環境のこと。GDPRにおける「個人のデータ移転権」とは異なる概念。 |
データユーティリティ | 「データユーティリティ」は、データの有用性や価値を示す言葉であり、特定の権利を指すものではない。 |
データリユース | データリユースは、データの再利用を意味するが、データを「本人が別のサービスへ移転できる権利」そのものではない。 |
つまり、「個人が自身のデータを移動・再利用できる権利」を指す言葉は、「データポータビリティ」だけなのだ。
実務におけるデータポータビリティの活用例
GDPRのデータポータビリティの権利は、単なる法律の話ではなく、実際のビジネスにも影響を与える。
以下のような場面で、データポータビリティが活用される。
1. クラウドサービス間の移行
ユーザーがGoogle DriveからOneDriveへデータを移動したい場合、データポータビリティの権利を行使して、データをスムーズに移動できる。
2. SNSやメッセージアプリの移行
例えば、Facebookのデータを取得し、別のSNSに移行することも可能になる。実際に、Facebookでは「Download Your Information」という機能を提供している。
3. 銀行や金融サービス
EUでは「オープンバンキング」という取り組みが進められており、顧客が銀行データを別の金融機関へ移行できる仕組みが導入されている。
こうした動きにより、企業はユーザーのデータを独占するのではなく、透明性を持ってデータの管理を行うことが求められている。
まとめ
G検定の試験において、GDPRの「データポータビリティの権利」は頻出のトピックのひとつだ。
試験対策だけでなく、実際のビジネスシーンでも関係が深い概念なので、しっかり理解しておこう。
✅ データポータビリティの権利とは?
→ ユーザーが自分のデータを取得し、他のサービスへ移行できる権利
✅ なぜ重要なのか?
→ ユーザーにデータの自由を与え、企業の独占を防ぐ
✅ 試験対策ポイント
→ 「データエコシステム」「データユーティリティ」「データリユース」との違いを理解すること
GDPRに関する知識は、G検定だけでなく、AI・データサイエンスの実務においても必須の知識だ。
この機会に、データ保護とユーザーの権利について、しっかり押さえておこう。
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