はじめに
「SNSの友達は何人まで意味を持つのか」「会社は何人規模まで一体感を保てるのか」。
こうした疑問に、意外と鋭く答えてくれる概念がダンバー数だ。
ダンバー数は単なる雑学ではない。
人間の認知能力を前提にした、人間関係・組織運営・チーム設計の実践理論でもある。
この記事では、ダンバー数の基本から「5-15-50-150-500の法則」、そして組織作りへの具体的な活かし方までを整理する。読後には、自分の人間関係や会社の規模感を、少し違った視点で見られるはずだ。
ダンバー数とは何か
ダンバー数とは、人間が安定した社会関係を維持できる人数の認知的上限を示す概念だ。
提唱したのは、イギリスの人類学者であるロビン・ダンバー。
ここで言う「関係」とは、
- 相手一人ひとりを知っている
- さらに、相手同士の関係性も把握している
この二つが成立している状態を指す。
単なる顔見知りや名前を聞いたことがある、というレベルではない。
ダンバーは霊長類の研究から、脳の大きさと群れのサイズには相関があることを見出した。
その関係式を人間に当てはめた結果、人間が円滑に維持できる社会関係は約150人という推定に至った。
5-15-50-150-500の法則
ダンバー数の面白い点は、「150人」だけで終わらないところにある。
ダンバーは民俗学的研究を通じて、人間関係が層構造になっていることにも注目した。
人間関係の階層構造
- 5〜9人(社会集団/クリーク)
人生の土台になる存在。家族や最も親しい友人がここに入る。精神的な支えであり、困ったときに真っ先に助けてくれる人たちだ。 -
12〜15人(シンパシー・グループ)
どんな状況でも信頼できる人たち。家族ほど近くはないが、失えば深く悲しむ関係性だ。 -
30〜50人(一団/バンド)
比較的頻繁に連絡を取り合える規模。現実的に「全員と会話できる」上限でもある。 -
150人(フレンドシップ・グループ)
顔と名前が一致し、関係性も把握できる限界ライン。共同体として自然に機能する最大サイズだ。 -
500人(トライブ)
会えば会釈する程度の弱いつながり。知人だが、深い交流はない。 -
1,500人(コミュニティ)
人間の長期記憶に留められる人数の限界。人生で出会い、記憶に残っている人たちだ。
SNSで「友達500人」「フォロワー1,000人」といった数字を競う文化があったが、
実際に意味のある関係として機能しているのは、その一部に過ぎない。
ネット上であっても、良好な関係を維持できる限界は150人前後という感覚は、経験的にも納得しやすい。
ダンバー数を組織作りに生かす
ダンバー数が真価を発揮するのは、組織設計の場面だ。
150人を超えると何が起きるか
ダンバー数の考え方では、150人を超えた組織は自然な結束を失う。
その結果、次のような変化が起きやすい。
- ルールや規則が増える
- 強制力のあるノルマや評価制度が必要になる
- 「あの人は何をしているのか分からない」が常態化する
これは能力や努力の問題ではない。
人間の認知構造そのものの限界だ。
管理できる人数は4〜6人
組織論では、一人が直接マネジメントできる人数は4〜6人が適正とされる。
これは自衛隊の部隊編成にも共通しており、最小単位の「班」は常に4〜6人で構成されている。
偶然ではない。
人間が状況を把握し、判断し、信頼関係を維持できるサイズだからだ。
実践的な人数の目安
- 〜50人
活性化された組織を維持しやすい。全体像も見え、コミュニケーションも回る。 -
50人超
部署や事業部といった単位での分割を検討するタイミング。
社内コミュニケーションを補強する仕組みが必要になる。 -
100人超
社内報や定期的な社内広報は必須。情報の偏りを防ぐ役割を果たす。 -
150人前後
分社化や組織再編を考える分岐点。ここを超えると、自然な意思疎通は期待しづらい。
まとめ
ダンバー数は、人間関係の限界を示すと同時に、無理のない組織設計の指針でもある。
- 深い人間関係は増やせない
- 組織は大きくなるほど分ける必要がある
- 150人は「努力で超えられる壁」ではない
この前提を受け入れるだけで、
人間関係に疲れにくくなり、組織運営も現実的になる。
もし今、
「人数が増えて回らなくなってきた」と感じているなら、
それは能力不足ではなく、ダンバー数のサインかもしれない。
次の一手は、気合ではなく設計だ。

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