はじめに
動画がカクつく、ページの読み込みが終わらない。Wi-Fiルーターを再起動しても変化なし。そんな時、疑うべきは回線そのものではなく「DNSサーバー」かもしれない。
かつて、私も同じ現象に悩まされたことがある。回線速度テストでは問題ないのに、体感速度だけが異常に遅い。
Linux歴10年を超える知人に相談すると、彼はニヤリと笑ってこう言った。「DNSをISP任せにしてると、たまにそういう沼にハマるよ」と。
実際、DNSを変更しただけで、詰まっていた水が一気に流れるように快適になった経験がある。
この記事では、Linux Mintユーザーに向けて、DNSサーバーを安全かつ確実に変更する方法を解説する。
GUIでの恒久的な設定から、緊急時のコマンド操作まで。このスキル一つで、あなたのブラウジング環境は劇的に変わる可能性がある。
そもそもDNSとは何者か?
DNS(Domain Name System)は、インターネット上の「通訳」であり「電話帳」だ。
私たちがブラウザに www.google.com と入力しても、コンピュータはその文字の羅列を理解できない。コンピュータが理解できるのは 142.250.206.68 といった数字の羅列(IPアドレス)だけだ。
この「人間用のURL」を「機械用のIPアドレス」に変換してくれるのが、DNSサーバーの役割だ。
もしこの「通訳」が仕事サボっていたり、反応が遅かったりしたらどうなるか?
どんなに回線が速くても、目的のサイトにたどり着くまでの「待ち時間」が発生してしまうのだ。
【推奨】GUIでDNSを確実に設定する方法
Linux Mint(Cinnamonなど)では、難しいコマンドを叩かなくても、マウス操作だけで安全にDNSを変更できる。これが最も推奨される「恒久的な」設定方法だ。
1. ネットワーク設定を開く
画面右下のタスクバーにあるネットワークアイコン(Wi-Fiや有線のマーク)をクリックし、「ネットワーク設定(Network Settings)」を選択する。
または、メニューから「設定」→「ネットワーク」と進んでもいい。

2. 使用中の接続を選択
「有線(Wired)」または「Wi-Fi」の項目から、現在接続しているネットワークの横にある歯車アイコンをクリックする。
3. IPv4タブでDNSを指定する
設定ウィンドウが開いたら、「IPv4」タブをクリックする。ここで重要な設定を行う。

- DNSの項目にある「自動(Automatic)」のスイッチをオフにする。
- 「サーバー」の欄に、使用したいDNSサーバーのアドレスを入力する。
入力例(Cloudflareの高速DNSを使う場合):
1.1.1.1, 1.0.0.1
※複数のアドレスを入れる場合は、カンマ(,)で区切るのがポイントだ。
- 最後に右上の「適用(Apply)」ボタンをクリックする。
これで設定は完了だ。一度Wi-Fiをオフにしてオンにし直す(再接続する)と、新しいDNSが確実に適用される。
どのDNSサーバーを使うべき?
「で、結局どこを設定すればいいの?」という疑問には、以下の信頼できるパブリックDNSをおすすめする。プロバイダの標準DNSより高速で、プライバシー保護に優れていることが多い。
| プロバイダ | プライマリDNS | セカンダリDNS | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Cloudflare | 1.1.1.1 |
1.0.0.1 |
世界最速クラス。プライバシー重視でログを保存しない方針。 |
8.8.8.8 |
8.8.4.4 |
超定番。安定性は抜群だが、Googleにデータが集まる点を気にする人もいる。 | |
| Quad9 | 9.9.9.9 |
149.112.112.112 |
セキュリティ特化。悪意あるサイトへのアクセスをDNSレベルでブロックしてくれる。 |
【上級編】コマンドで一時的に変更する方法(緊急用)
そんな時はターミナルから設定ファイルを直接触る手もある。ただし、現代のLinux(systemd採用システム)には罠があるので注意が必要だ。
/etc/resolv.conf の編集
Linuxでは伝統的に /etc/resolv.conf というファイルにDNS情報を記述する。
sudo nano /etc/resolv.conf
ファイルを開き、既存の記述をコメントアウトして以下のように書き換える。
nameserver 1.1.1.1
nameserver 8.8.8.8
保存すれば即座に反映される。
だが、ここには落とし穴がある。
最近のLinux MintやUbuntuでは、このファイルはシステムによって自動生成・管理されていることが多い。そのため、PCを再起動したりネットワークをつなぎ直したりすると、元の設定に勝手に書き戻されてしまうのだ。
あくまで「今のトラブルを切り分けるための一時的な応急処置」として割り切って使おう。
本当に変わった?設定の確認方法
設定を変えたつもりでも、実は変わっていなかったら意味がない。以下のコマンドで現在のDNSサーバーを確認できる。
resolvectl status
または
nmcli dev show | grep DNS
ここに設定した 1.1.1.1 などが表示されていれば成功だ。
まとめ
「ネットが遅い」というストレスは、意外と単純な設定変更で解消できることがある。
Linux MintでのDNS変更は、GUIを使えば初心者でもリスクなく行える簡単なチューニングだ。
- GUI設定なら、再起動しても設定が維持されるので安心。
- Cloudflare (1.1.1.1) や Google (8.8.8.8) など、信頼できるDNSを選ぶ。
- コマンドでの変更は「一時的なテスト」と割り切る。
もし今、ブラウザの読み込みバーが進まずにイライラしているなら、騙されたと思ってDNSを変えてみてほしい。
その「詰まり」が取れた瞬間、あなたのインターネットは本来のスピードを取り戻すはずだ。


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