はじめに
G検定では、AIの歴史的背景や技術的ブレイクスルーに関する問題も数多く出題される。
特に「第3次AIブーム」の流れを理解することは、試験対策だけでなく、AI技術を体系的に捉えるうえでも重要だ。
今回は、G検定の実際の過去問を題材に、「ディープラーニングの活用が進んだ理由」とその背景を整理していこう。
そして、「なぜそれが“最も不適切な選択肢”なのか」を、技術的な視点から解き明かす。
出題された問題と選択肢
まずは、実際に出題された過去問を見てみよう。
第3次AIブームで、ディープラーニングの活用が進んでいるが、それ以前からディープラーニングの考えは存在している。活用が進んだ理由として、最も不適切な選択肢を選べ。
選択肢
- IoT等によって膨大なデータが収集されるようになったため
- ディープラーニング等のフレームワークが普及したため
- Cycプロジェクトが完了したため
- GPU等の計算能力が向上したため
正解は「3. Cycプロジェクトが完了したため」
この設問に対して「最も不適切」なのは、選択肢3のCycプロジェクトに関する記述である。
他の選択肢が、現実にディープラーニングの活用を加速させた要因であるのに対し、Cycプロジェクトは方向性も影響範囲も異なる。
各選択肢を技術的に読み解く
IoT等によって膨大なデータが収集されるようになったため
✅ 適切な選択肢
ディープラーニングの性能は、入力されるデータ量と密接に関係している。
特に第3次AIブームでは、IoT(モノのインターネット)を通じてセンサーや端末から膨大なデータが得られるようになり、学習精度の向上につながった。
ディープラーニング等のフレームワークが普及したため
✅ 適切な選択肢
TensorFlowやPyTorchなどのフレームワークが登場したことにより、エンジニアがディープラーニングを手軽に実装・検証できるようになった。
こうした開発ツールの整備は、技術の社会実装を後押しする重要な要素である。
Cycプロジェクトが完了したため
❌ 不適切な選択肢(正解)
Cycプロジェクトとは、人間の常識を形式知として記述・蓄積し、推論可能にしようとした長期研究プロジェクトだ。
このプロジェクトは知識ベース型AIの研究であり、ディープラーニングのような統計的手法とは方向性が異なる。
また、Cycプロジェクトが完了したことで何かしらのブレイクスルーが起きたという事実も存在しない。
したがって、活用が進んだ理由として挙げるのは不適切である。
GPU等の計算能力が向上したため
✅ 適切な選択肢
ディープラーニングでは、多層のニューラルネットワークを用いるため、膨大な行列計算が必要となる。
GPU(グラフィックス処理ユニット)は並列計算を得意とするため、訓練時間を大幅に短縮できる。
この計算資源の進化こそが、ディープラーニングを実用レベルに引き上げた鍵となった。
なぜこの問題が重要なのか?
G検定では「AI技術がどのような背景で発展してきたのか」を理解しているかを問う問題がたびたび出題される。
技術トレンドを押さえるだけでなく、「なぜその技術が今になって実用化されたのか?」という問いに答えられることが重要だ。
つまり、ただの暗記では通用しない。
選択肢の背後にある「文脈」や「技術的背景」まで読み解く力が問われている。
応用:過去問の読み解き力を鍛えるヒント
- 「不適切な選択肢」問題では、“もっともらしいけど技術的に筋が通っていない”ものを選ぶ訓練が必要
- キーワードの背景(例:Cyc、GPU、IoT)を自分なりに一言で言い換えて説明できるようにする
- 用語が時系列的にどのブームに属するのかを把握する(例:Cycは第2次AIブームの文脈)
まとめ
G検定の過去問に出題された「第3次AIブームにおけるディープラーニングの活用理由」に関する問題を振り返った。
選択肢の一つ一つを丁寧に掘り下げていくことで、ただの知識ではなく「理解」を身につけることができる。
✅ ディープラーニングの活用が進んだ要因は、データの爆発的増加、計算能力の向上、ツールの整備などが重なった結果
✅ Cycプロジェクトはブームの流れとは無関係であり、不適切な選択肢と判断できる
✅ G検定では「正解」だけでなく「なぜ間違いなのか」まで説明できる力が問われている
過去問は単なる暗記の対象ではない。理解を深めるヒントが詰まっている。
本記事がその一助となれば幸いだ。


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