はじめに
ディープラーニングの分野において、ResNet(Residual Network)は非常に重要なモデルだ。2015年にMicrosoftが提唱したこのニューラルネットワークは、ディープラーニングの性能向上に大きく貢献した。
では、ResNetの最大の特徴は何なのか?G検定の問題をもとに、ResNetの本質を解説しよう。
ResNetが解決した「勾配消失問題」
ディープラーニングの発展において、ネットワークを深くすることで精度が向上することが知られていた。しかし、ある問題が発生した。それが勾配消失問題だ。
勾配消失とは?
ニューラルネットワークの層が深くなるにつれて、逆伝播(バックプロパゲーション)の際に勾配が極端に小さくなり、学習が進まなくなる現象のこと。
たとえば、通常のフィードフォワードネットワーク(従来のCNN)を100層、200層と深くすると、途中の層で勾配がゼロに近くなり、ネットワークがほぼ学習しなくなってしまう。
この問題を解決するために登場したのが、ResNetの「スキップコネクション」だ。
スキップコネクションとは?
スキップコネクション(Skip Connection)は、層を飛び越えて直接情報を伝達する仕組みのこと。
通常のニューラルネットワークでは、層ごとに順番にデータが処理される。しかし、ResNetでは「ある層の出力を、数層先の層に直接加算する」仕組みを取り入れた。
具体的には、ResNetの基本構造である「Residual Block(残差ブロック)」では、次のような計算を行う。
[
y = F(x) + x
]
ここで、
- ( x ) は入力データ
- ( F(x) ) は通常の畳み込み処理
- ( x ) をそのまま出力側に足し合わせることで「スキップ」
この「スキップ」があるおかげで、勾配が消失せず、深いネットワークでも学習が進みやすくなった。
なぜスキップコネクションが有効なのか?
スキップコネクションを導入すると、以下のメリットが生まれる。
- 勾配消失問題の緩和
- 直接データを伝播させることで、勾配が小さくなりすぎるのを防ぐ。
- 学習の安定化
- 深い層でもスムーズに学習できるようになり、ネットワークのパフォーマンスが向上。
- アイデンティティマッピングの実現
- ネットワークが「学習しないほうがよい部分」を自動的にスキップできる。
- これにより、余計な計算を減らし、最適な表現を効率よく学習できる。
実際、ResNetは従来のVGGネットワーク(16層や19層のCNN)よりも遥かに深い152層のネットワークでも学習が可能であり、2015年のImageNetコンペティション(ILSVRC)で優勝した。
問題
実際のG検定で出題された問題を見てみる。
2015年にMicrosoftが提唱したニューラルネットワークのモデルであるResNetは(●)を用いている特徴がある。
選択肢
- 転移学習
- スキップコネクション
- グレースケール化
- インセプションモジュール
正解は「スキップコネクション」
他の選択肢との違い
では、他の選択肢はなぜ不適切なのか?簡単に整理しておこう。
選択肢 | 説明 | ResNetに適用されるか? |
---|---|---|
転移学習 | 事前に学習済みのモデルを活用して新しいタスクに適用する手法。 | ❌(ResNetの特徴ではない) |
スキップコネクション | 層を飛び越えて情報を伝達する仕組み。 | ✅(ResNetの核心) |
グレースケール化 | 画像の色情報をなくし、白黒画像として処理する手法。 | ❌(ResNetの特徴ではない) |
インセプションモジュール | 異なるサイズの畳み込みフィルターを並列に適用する仕組み(GoogleのInceptionモデルの特徴)。 | ❌(ResNetではなく、GoogLeNetの特徴) |
特に「インセプションモジュール」は、ResNetとよく混同されるが、これはGoogleが提案したGoogLeNet(Inceptionモデル)の特徴であり、ResNetとは別のアプローチだ。
まとめ
- ResNetの最大の特徴は「スキップコネクション」
- 勾配消失問題を解決し、超深層ネットワークの学習を可能にした
- ImageNetで優勝し、現在のディープラーニングの基盤となっている
深層学習の発展において、ResNetがもたらした影響は計り知れない。もしG検定を受験するなら、スキップコネクションの概念とその利点をしっかり理解しておこう。
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