はじめに
ISOをUSBに焼いて、いざ起動。画面に表示されるのは、黒い背景に白い文字が並ぶだけのシンプルなプロンプトだ。
「え、ここからどうすればいいの」
多くの人がここで手が止まる。Arch Linuxのインストールは難しいという評判を、身をもって実感する瞬間だ。
実際、以前は手動でパーティションを切り、ブートローダーを設定し、ネットワークを構成し……という工程を一つずつコマンドで打ち込む必要があった。一つでもミスをすれば起動しないシステムが出来上がる。
しかし2026年時点では事情が変わっている。公式が提供する対話型インストーラー「archinstall」を使えば、この工程の大半をメニュー形式で進められる。難解だったインストール作業が、選択肢を選んでいくだけの作業に変わったと言っていい。
この記事では、archinstallを使ってArch Linuxを実際にインストールする手順を、つまずきやすいポイントも含めて順番に解説する。
なお、インストール完了後にデスクトップとして快適に使うための設定については、以下の記事でまとめている。
この記事はいわばその前段、土台を作る工程だ。
この記事で分かること
- インストールメディアの準備からブートまでの下準備
- archinstallの各メニュー項目で何を選べばいいか
- 初心者がつまずきやすいポイントとその回避方法
- インストール完了後、最初の再起動で確認すべきこと
手順1 インストールメディアを準備する
まずArch Linux公式サイトからISOイメージをダウンロードする。ファイルサイズはそれほど大きくないため、回線が普通であれば数分で終わる。
ダウンロードしたISOはUSBメモリに書き込む。WindowsであればRufus、macOSやLinuxであればddコマンドやVentoyが定番だ。
# macOS/Linuxでddコマンドを使う場合の例
# /dev/diskXは書き込み先のUSBメモリを正確に指定すること
sudo dd if=archlinux-2026.xx.xx-x86_64.iso of=/dev/diskX bs=4M status=progress
ここで一つだけ強く注意しておきたい。of=で指定するデバイス名を間違えると、USBメモリではなく内蔵ディスクのデータを消してしまう事故につながる。書き込み先はlsblkやdiskutil listで必ず二重に確認してから実行してほしい。
USBの用意ができたら、PCのBIOS/UEFI設定でブート順位を変更し、USBから起動する。UEFIモードで起動できているかどうかは、後々のブートローダー設定に関わるため、ここも見落とせないポイントだ。
手順2 ネットワークに接続する
Live環境が起動すると、コマンドラインだけの画面が表示される。有線LANであれば接続するだけで自動的にネットが使える状態になっていることが多い。無線LANの場合はiwctlを使う。
iwctl
# iwctlのプロンプト内で実行
device list
station wlan0 scan
station wlan0 get-networks
station wlan0 connect SSID名
exit
接続できているかどうかは、以下のコマンドで確認しておく。
ping -c 3 archlinux.org
応答が返ってくれば準備完了だ。ここでネットワークが繋がっていないと、この後のarchinstallでパッケージのダウンロードに失敗するため、焦らずここで確実に確認しておこう。
手順3 archinstallを起動する
ネットワークが確認できたら、いよいよ本題のarchinstallに入る。
pacman -S archinstall
archinstall
実行するとメニュー形式の画面が立ち上がる。上下キーで項目を選び、Enterで決定、Escで戻るという操作感だ。設定すべき項目は多いが、一つずつ見ていけば難しくない。
| 項目 | 内容 | 迷ったときの選び方 |
|---|---|---|
| Mirror region | パッケージ取得元の国 | Japanを選ぶとダウンロードが速くなりやすい |
| Locale language | システム全体の言語 | 日本語表示にこだわらなければデフォルトのままでも可 |
| Keyboard layout | キーボード配列 | 日本語キーボードならjp106 |
| Disk configuration | パーティション分割方式 | 初めてなら自動分割(Best-effort partition layout)を選ぶ |
| Disk encryption | ディスク暗号化の有無 | 学習目的やデスクトップ用途ならスキップでも問題ない |
| Bootloader | ブートローダー | systemd-bootが軽量で標準的 |
| Profile | システムの用途 | デスクトップとして使うなら「Desktop」 |
| Desktop environment | デスクトップ環境 | GNOMEかKDE Plasmaが初心者には無難 |
| Graphics driver | グラフィックドライバ | 迷ったらオープンソースドライバを選択 |
| Audio | オーディオサーバー | デフォルトのPipeWireで問題ない |
| Network configuration | ネットワーク設定 | NetworkManagerを選ぶとデスクトップで扱いやすい |
| Timezone | タイムゾーン | Asia/Tokyo |
| Root password / User account | パスワードとユーザー作成 | 一般ユーザーを必ず作成し、sudo権限を付与する |
特に迷いやすいのがDisk configurationとProfileの二つだ。
Disk configurationでは、既存のデータをすべて消してよいのであれば自動分割を選ぶのが最も安全だ。手動設定はパーティションのサイズや位置を細かく制御できる反面、設定を誤るとインストール自体が失敗する。初回はまず自動分割で一通りの流れを体験し、慣れてから手動設定に挑戦するという順番をおすすめしたい。
Profileでは「Minimal」を選ぶとデスクトップ環境なしの最小構成になる。サーバー用途や、後から自分で一つずつ環境を組み立てたい人向けだ。逆に、最初からデスクトップとして使いたいなら「Desktop」を選び、続けてGNOMEやKDE Plasmaといった具体的な環境を指定する流れになる。
手順4 設定を確認してインストールを実行する
すべての項目を設定し終えると、メニューの最後に「Install」という選択肢が現れる。実行前に、設定内容がサマリーとして表示されるので、ここで見落としがないか最終確認しておこう。
インストールを開始すると、パッケージのダウンロードと展開が始まる。回線速度やミラーの状態にもよるが、10分から30分程度で完了することが多い。完了後は「Chroot into installation for post-installation configuration?」といった確認が出ることがある。これは、再起動前に追加の設定をその場で行うためのオプションだ。特別な作業が不要であれば、そのまま終了して構わない。
最後にUSBメモリを抜いて再起動する。
reboot
手順5 初回起動後に必ず確認すること
再起動後、ログイン画面またはコマンドラインが表示されれば、インストール自体は成功している。ここで最初に確認しておきたいのは次の3点だ。
- ネットワークに再接続できるか(
ping archlinux.org) - 一般ユーザーでログインし、
sudoコマンドが通るか pacman -Syuでシステム全体を最新化できるか
この3つが問題なく通れば、土台としては完成だ。
ここから先、日本語入力の設定やAURヘルパーの導入、定期的なメンテナンス習慣の構築といった「使い込むための設定」に進んでいくことになる。その具体的な手順は、前述の関連記事にまとめているので、続けて参照してほしい。
まとめ
archinstallの登場によって、Arch Linuxのインストールは以前よりずっと敷居が低くなった。メニューに沿って一つずつ選択していくだけで、以前は数十のコマンドを要した作業が数十分で終わる。
つまずきやすいのは、USBメモリの書き込み先を間違えないこと、ネットワーク接続を事前に確認すること、そしてDisk configurationとProfileの選び方の三つだ。
この記事の手順通りに進めれば、初めてでも迷わずインストールを終えられるはずだ。
土台が整ったら、次はデスクトップとして育てていく段階に進もう。

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